列車の車内販売衰退はコンビニのせい? 商品がバッティング 差別化のカギも列車に

車内でしか味わえないという「ブランド化」

 クルーズトレインは「地産地消」が売りです。地元産の食材を使用されたりするだけでなく、季節の旬の食材を使用したり、車内や見学地などでも、地元の銘菓が提供されたりします。そしてラウンジ車でもオリジナルのカクテルが提供されるなど、コンビニなどで販売されている商品とは、完全に差別化されているのです。

 例えばホットコーヒーに限っても、「トランスイート四季島」で提供されるのは完全にオリジナルブランドです。つまりこのホットコーヒーには「トランスイート四季島」というブランドが付いて来るわけです。「トワイライトエクスプレス瑞風」でも、地元産の銘菓や抹茶が振る舞われます。このように「ブランドを売る」ことも、重要な差別化といえるでしょう。

 抹茶やオリジナルカクテルであれば、缶飲料として車内販売で提供することが可能です。抹茶を販売しているコンビニはほとんどないので、地元産の和菓子や銘菓をセットにして、車内で販売する方法は模索できそうです。弁当ならば、クルーズトレインの食堂車で提供された料理のうち、人気があった料理の一部を季節ごとに変えて提供するなどの方法も考えられます。ただし、購入層が一般利用客であることから、価格を吊り上げすぎては本末転倒でしょう。

 クルーズトレインには、車内販売を復活させるノウハウが詰まっており、それらが一般の列車の車内販売にフィードバックされてもよいのではないでしょうか。キーワードは「ブランド化」「差別化」「オリジナル商品」であると筆者は考えます。

【了】

【連写】新幹線で「ビールのきめ細かい泡」を作る方法

Writer: 堀内重人(運輸評論家)

運輸評論家として、執筆活動や講演活動、テレビ出演なども行う。主要著書に『寝台列車再生論』(戎光祥出版)、『地域の足を支えるコミュニティーバス・デマンド交通』(鹿島出版会)、『観光列車が旅を変えた』(交通新聞社)など多数。日本交通学会、公益事業学会、日本海運経済学会、交通権学会会員。

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コメント

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5件のコメント

  1. 単純に、冷たいモノは車内で買いたい。

    • 激しく同意。
      只人手不足もあるから、高速バスみたいな休憩時間を設けりゃ良い感じ。
      そう言う施策を提案している人は多い。

  2. 温かくて匂いのする食べ物を客室内で食することに眉をひそめる向きがいるようです(英国では不文律だそうです)。
     かつて東日本キヨスクでは大口注文なら日時、希望駅などわかっていれば酒類や弁当などを届けてくれました。今は団体で列車で旅行する会社などないのでしょう。
     駅売店でショーケースにビールが無いので聞いたら裏から出してくると。ぬるいなら要らないと言ったら裏にも冷蔵庫があるとのことでした。

  3. 個人的には紙パック式のソフトドリンク自販機を車内に設置して欲しいなと。
    決済も電子マネーかスマホ決済で、価格も駅構外と比べてプラス10円増で。
    食事もおにぎり、サンドイッチ、惣菜パンに絞って自販機で販売して欲しいな。

  4. 単に競合が現れたからその分下がったというわけでもなく価格競争力が段違いなので順当に負けたようです。
    乗り物チャンネルで紹介する駅弁って値段が高いじゃないですか、コンビニのお弁当と比べると2~2.5倍くらい高い。これでファンが離れてしまったのだと思われます。
    個人的には「レンジて温めてゆきますか?」よりも冷めたまま食べる時に美味しく感じられるように調整するという駅弁文化のほうが好きなんだけどね。
    あと、特急に地方側の小駅から乗る場合にエキナカどころか駅前徒歩圏内に焦点が皆無な場合も有るので、それなのに車内で食事を購入できないのではサービス低下と呼ばれても仕方ないですよね。やっぱり考え直して欲しいです。