自然災害からの鉄道復旧に高い「壁」 補助制度の実態 公費で早く復旧する道路との違い

自然災害により被害が出た鉄道会社には、復旧にあたり国などから補助金が支給されます。ただ、制度の適用条件は様々で、その度合いによっては廃止やBRT化など運命が左右されます。過去の事例からその実態を見てみます。

国からの補助率引き上げへ 復旧した三陸鉄道

 鉄道事業者にとって、自然災害による被害は会社の存続に関わります。少し古い事例を挙げると、宮崎県の高千穂鉄道は、2005(平成17)年9月の台風14号がもたらした集中豪雨により橋梁や路盤が流失。復旧に要する費用が莫大であったため、そのまま廃止されました。

 当時から、鉄道が被災した際は鉄軌道整備法に基づき、復旧に要する費用に対して国や地方自治体などから補助がありました。内訳は国からが1/4、各自治体からが1/4であるため、残る半分は鉄道事業者が負担しなければならず、経営基盤の脆弱な地方民鉄や第三セクター鉄道では死活問題です。

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2020年7月の集中豪雨により、路盤が流出したJR肥薩線(画像:JR九州)。

 東日本大震災を例に見ても、それに伴う津波などにより、第三セクター鉄道の三陸鉄道も被害額180億円という甚大な損害を出しました。先述の通り、従来の鉄軌道整備法によれば、復旧に向け90億円は三陸鉄道が負担しなければなりません。

 JR東日本の大船渡線や気仙沼線も、津波などで甚大な被害が出ましたが、JR東日本は「黒字の鉄道事業者である」という理由から、国からの補助金が1/4に据え置かれました。結果として、鉄道として復旧させるのではなく、BRT化する道を選びました。

 三陸鉄道の復旧も絶望的と見られていましたが、当時の民主党政権は三陸鉄道を復旧させるべく、国から支給される補助金の補助率を1/2に引き上げました。そして残りの半分を岩手県と各自治体が1/4ずつ負担することにしましたが、これに対しては特別交付税を充てました。被災車両へのクウェートからの援助もあり、三陸鉄道は“鉄道”としての復旧が可能となったのです。

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コメント

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6件のコメント

  1. 線路も公費で維持運営にすればいいのに。併用軌道でもいいんだし。

    • 併用軌道は『列車のスピードを遅くしないといけない』、『自動車交通の障害となりかねない』という大きな欠点があります。
      (なぜ、路面電車が『目の敵』にされ廃止に向かったのかを考えれば分かりやすい)
      線路も『公費で』運営維持というよりは、『国が統一的社会福祉インフラの一部とみて』運営維持に積極的に関わる形に持って行くべきではないかなと思う。
      (国が線路維持のための『100%株主』の会社を作り、JR・私鉄・三セク関係なく『全ての路線の保有権』を持ち、経営は今まで通りそれぞれの『運行会社』に任せる)

  2. JRの線路はすべて上下分離でいいと思います
    経営はJRにまかせ線路維持は自治体が行えば無駄が少なくなると思うので

    • >経営はJRにまかせ線路維持は自治体が行えば無駄が少なくなると思うので

      三セクの事例を考えると、これはこれで『都道府県体力の差から境を越えると線路の状況が変ってしまう』という運行上の大問題になりかねない気がする。
      どちらかと言えば、線路維持に関しては『国の仕事』とすべきじゃないかな。

  3. 大船渡線の一部BRT化に触れてありましたが、もとから津波をかぶりにくい反面トンネルや盛り土で既存集落を比較的にスルーしてきた三陸鉄道と違って、高台移転も必要だっただろうから鉄道での復旧は難しかったのですかね。
     輸送量がわりとある仙石線や常磐線の高台へのリルートは自費だったんですよね?

  4. >公共交通は「営利事業」と認識
    この世間一般の認識を、多大な困難を乗り越えてでも改めない限り、災害の度に地方の鉄道は淘汰され続けるかと。あくまでも世間では
    「鉄道は営利企業の私有財産(公営民営問わず)。公費による復旧は銀行救済と同じ悪手」
    でしょうから。