愛された「開かずの踏切」? ランナーを阻み、首相を怒らせた「戸塚大踏切」最期の日々

踏切西側の道路は「吉田道路」(首相)とも、なぜ?

 戸塚大踏切をめぐる周辺道路の事情についても触れておきます。

 戸塚駅開設当時、市街地は駅西側に広がっていたため、出入口は西口しかありませんでした。しかし、駅東側に戸塚競馬場(現在の日立製作所横浜事業所付近)が開設されたことに伴い東口が新設されます。こうして、駅東西に人の流れが生まれたのです。

 当然、踏切を渡る人が増えます。しかし、沿線の市街化にあわせ列車の運転本数も増えていました。大正時代にはすでに、戸塚大踏切は「開かずの踏切」として有名になっていたようです。この頃に始まった「箱根駅伝」で、ここがランナーを足止めさせるポイントでもあったことから、この踏切は駅伝との関係でもしばしば語られます。

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踏切廃止後、東口側に広場が整備された。踏切があったことを伝えるレリーフが設置されている(2021年7月、小川裕夫撮影)。

 そして、この踏切に縁のある大物政治家が吉田 茂元首相でしょう。大磯に居宅を構えていた吉田元首相は、自宅から東京までの往復で同踏切を頻繁に通行していました。しかし、踏切の遮断時間があまりにも長いことに業を煮やし、国道1号線の西側に線路をオーバークロスするバイパス道路を新設するように指示したといわれています。現在の戸塚道路のことです。この逸話には尾ひれがついている可能性もありますが、こうした由来からバイパス道路は「吉田道路」とも呼ばれます。

 バイパス道路の完成により、遠方からのクルマは踏切を通る必要がなくなりました。とはいえ「開かずの踏切」の根本的解決にはなっておらず、事故防止などの観点からその後も廃止へ向けた議論が続けられました。結果的に、長い歳月をかけて廃止されたのです。

 80年以上あった「開かずの踏切」として地元に根付いていた戸塚大踏切は、戸塚の原風景でもあり、周辺住民にとって生活の一部といえるものでした。それだけに、今でも多くの人たちが大踏切を懐かしい思い出にしています。

【了】

※一部修正しました。(9月17日11時04分)

【!?】首都高の入口に“鉄道”の踏切が…

Writer: 小川裕夫(フリーランスライター・カメラマン)

フリーランスライター・カメラマン。1977年、静岡市生まれ。行政誌編集者を経てフリーに。官邸で実施される首相会見には、唯一のフリーランスカメラマンとしても参加。著書『踏切天国』(秀和システム)、『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『東京王』(ぶんか社)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)など。

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コメント

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6件のコメント

  1. 首都高羽田入口の遮断機は本題と関係ないでしょ。

  2. なぜ5枚ある添付画像の先頭に、戸塚踏切ではなく「遮断機がある」程度しか関連のない首都高の画像を持ってくるのか。
    本当に意味が分からないし、ウケ狙いだとしたら滑ってるのでやめてほしい。

  3. 「踏切があった場所(西口側)には」と書いていますが、写真のキャプチャーにあるように東側ですね。
    踏切跡地にある歩道橋に「大踏切デッキ」と名付けられているのも、歴史を残したい地元民の気持ちの表れです。
    それから、「吉田道路」と書いていますが、地元民の私はそんな言い方を聞いたことがありません。地元民はもっぱら「ワンマン道路」と呼んでいます。ワンマン宰相と呼ばれた吉田茂からであるのは言うまでもありません

    • 乗りものニュース編集部です。

      このたびはご指摘をいただき、誠にありがとうございます。
      修正いたしました。

      これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、
      何卒よろしくお願い申し上げます。

  4. 記事の間違いを指摘しますので、対応をお願いします。

    > しかし2014(平成26)年1月に歩行者・自転車用の跨線橋が、翌2015(平成27)年3月に自動車専用のアンダーパスが完成。これらの完成により、ついに踏切は廃止されました。

    これは間違いです。
    跨線橋は、国道一号線の歩道部になるそうで、車両である自転車は通行できません。道路管理者に確認済みです。
    また、アンダーパスは、自動車専用道路ではなく、原動機付自転車も通行可能です。
    普通の道路ですが、残念ながら、歩行者と軽車両が通行止めの規制がかかっています。

    開かずの踏切を排除して、それまで普通に通行できていた自転車等の軽車両が通行できなくなった。という改悪の事実(道路管理者はその改悪を認めています)を、このようなニュースでも取り上げて欲しいです。
    最低でも「自転車は跨線橋を通行できる。」という誤りは訂正してください。跨線橋で学生の自転車が通行している。という法律違反を見かけますが、そのような違反を発生させるような誤った記事は、社会的にも許されないと思います。

    • 乗りものニュース編集部です。

      このたびはご指摘をいただき、誠にありがとうございます。
      修正いたしました。

      これからも変わらぬご愛顧を賜りますよう、
      何卒よろしくお願い申し上げます。