技術屋の理想&ドイツ空軍のムチャ振りに泣かされた悲運の爆撃機「ハインケルHe177」

第2次大戦中の4発エンジン搭載の大型爆撃機というと、アメリカやイギリスの機体がメジャーですが、ドイツでも作られていました。ただ、なかには双子エンジンという異形の機体も。どんな構造なのか、戦歴はどうだったのでしょうか。

「急降下爆撃こそベスト!」に振り回される

 1938(昭和13)年のこと、当時の航空省技術局長だったエルンスト・ウーデット少将が、ハインケルに対して本機に急降下爆撃能力を付加するよう命じたのです。ウーデットといえば、戦間期に急降下爆撃の先進国だったアメリカでその薫陶を受け、ドイツ空軍に急降下爆撃技術を普及させた、いわば「急降下爆撃の信奉者」でした。彼は、双発エンジン構造のJu88でも急降下爆撃ができるのだから、本機にもできるものと気楽に考えていた節がありました。

 これに対し、ハインケルは大反対します。外観は双発機ですが実質4発機で、しかもJu88よりもはるかに重いHe177に急降下爆撃能力を付加するのは困難だからでした。しかし、このようなハインケルの抗議は退けられ、空軍の要求に従ってHe177に急降下爆撃能力が付け加えられることになったのです。

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ドイツ空軍のハインケルHe177「グライフ」爆撃機。イギリス空軍の手によってテストが行われているときのものなので、イギリスの国籍標識に描き替えられている(画像:イギリス帝国戦争博物館/IWM)。

 かくしてHe177は、液冷エンジンの双子化と急降下爆撃能力の付加という、ふたつの難題を課せられてしまいました。そして案の定、この両方の問題への対処に苦労した結果、本機の実用化に遅れが生じるようになります。

 結局、急降下爆撃能力の付加については撤回されました。考えてみれば、ボーイングB-29「スーパーフォートレス」やアヴロ「ランカスター」といった鈍重な4発爆撃機に急降下爆撃能力を求めるような、無茶な要求だったからです。

 また、火災や故障を起こしやすい双子エンジンについても、エンジンそのものの換装やエンジン周りの設計修正、整備の強化などで対応し、最終的にはそこそこ高性能な「4発爆撃機」として運用できるようになりました。

【写真】爆弾倉オープン&エンジン交換作業中のHe177

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