昭和の「特急専用3等車」今もフツーに乗れる 座り心地は? 大井川鐡道スハフ43形

なぜ国鉄から大井川鐵道へ渡ったのか

 スハフ43形は1958(昭和33)年より、東北本線(常磐線回り)で初となる特急「はつかり」に転用されます。車体は青色に白帯の塗装ですが、大井川鐵道はこの時の姿を再現しています。

 1960(昭和35)年に「はつかり」がキハ81系気動車に置き換えられると、スハフ43形は急行用に格下げされます。その際に近代化改装がなされ、固定式だったクロスシートが回転式に改められています。ただし乗客は操作できず、車庫などで係員が座席を向け直していたようです。

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座席背面。新製時にはテーブルと灰皿があった(2019年8月、安藤昌季撮影)。

 そして1975(昭和50)年に四国へ転属。ここでは普通列車用として、座席は回転式から向かい合わせ固定に変更され、テーブルも撤去されます。同時期の旧型客車は1455mmのシートピッチでしたが、スハフ43形は向かい合わせにすると1670mmあり、座席も元特急用なだけあって座り心地に優れたものでしたから、「乗り得車両」だったといえます。

 スハフ43形は1986(昭和61)年に引退後、「日本ナショナルトラスト」が産業文化財保護のため寄付により維持する「トラストトレイン」車両に指定。大井川鐡道に渡り、現在に至ります。筆者(安藤昌季:乗りものライター)はスハフ43形の座席に座ったことがありますが、座り心地自体は現代の特急車両にも劣らない、素晴らしいものでした。

 大井川鐡道は後代の14系客車も導入していますから、スハフ43形がいつまで現役かはわかりません。最後の「特急専用3等車」の座り心地を、現役のうちに体験してもよいでしょう。ただ、「トラストトレイン」での運行時以外はほかの客車と共通運用なので、乗車できるかは運といえます。

【了】

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Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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コメント

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1件のコメント

  1. 乗り心地と言っても所詮3等、という感想だよね…
    昔の人は姿勢良かったんだな