海没F-35Cに中国はどう出る? 現場は南シナ海! 有事へ発展する可能性はあるのか

F-35のサルベージは数か月単位 注目は五輪後か

 中国がアメリカのサルベージ作業に対し、艦船や航空機を繰り出して直接的に妨害するかは、メリットとデメリットを秤にかける必要があります。国内的にこの海域を「核心的利益」とさんざん煽っていることもあり、アメリカ海軍の自由にさせれば、指導部は弱腰だと批判を招きかねず権威を失墜してしまいます。対外的にも九段線(十一段線)問題で譲歩したと受けとられかねません。

 しかし中国の妨害にアメリカが反撃すれば、一気に緊張は高まります。サルベージ作業を公表しても中国に直接的な動きがまだ見えないのは、メリットとデメリットを慎重に判断しているからと思われます。現在、北京冬季オリンピックが開催中であることも関係しているかもしれません。

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アメリカ海軍潜水救難監督部(SUPSALV)のデポ配置。世界8か所にサルベージ部隊を配置する(画像:アメリカ陸軍工兵司令部サイト掲載SUPSALV資料より抜粋)。

 アメリカ海軍の回収作業はSUPSALV(潜水救難監督部)が実施し、第7艦隊から派出された艦船が護衛することになるでしょう。SUPSALVは佐世保とシンガポールにデポ(兵站拠点)があります。現場到着まで10日、水深が深いため作業は数か月単位でかかるだろうといわれています。

 その間、中国の動きには目が離せません。現場海域は南海艦隊の管轄で、欧米の関心がウクライナに向くなか、空母打撃群を擁するアメリカ海軍第7艦隊に真っ向から挑むことはせず、行動は接近威嚇、航路妨害、舷側体当たりのいやがらせレベルで、緊張のエスカレーションをコントロールしながら「やってるぞ」と内外アピールに努めるでしょう。

 これが台湾有事のきっかけになるというのは飛躍しすぎだと思いますが、南シナ海は中国のいう「美しく静かな平和な海」とは裏腹に、文字通り「一石」(一機)を投じられるとどんな波紋が起きるか分からない、緊張と係争の海なのです。

【了】

中国が主張する「九段線」とF-35C墜落地点

Writer: 月刊PANZER編集部

1975(昭和50)年に創刊した、40年以上の実績を誇る老舗軍事雑誌(http://www.argo-ec.com/)。戦車雑誌として各種戦闘車両の写真・情報ストックを所有し様々な報道機関への提供も行っている。また陸にこだわらず陸海空のあらゆるミリタリー系の資料提供、監修も行っており、玩具やTVアニメ、ゲームなど幅広い分野で実績あり。

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