ディーゼル不正のリコール対応は「不正と同じことするしか…」日野自の性能試験不正に困惑の声
日野独自開発 アドブルー不要で理想のシステムだったはずが
「HC-SCR」は中小型ディーゼル車用に日野が独自開発し、機械振興協会から2013年度経済産業大臣賞を授与されました。
現在主流の後処理装置は、排ガスをクリーンにするために後処理装置内で尿素水(欧州商品名アドブルー)を使いますが、「HC-SCR」はディーゼル燃料そのものを尿素水の代わりに使います。尿素水を使わないので、液体をためるタンクなど新たな装置の搭載も、尿素水を供給するディーゼルスタンドのようなインフラも不要です。
中小型商用車は、限られたエリアでの配送が中心なので、わざわざ尿素水のため遠方のスタンドに行く手間が省けます。荷物の積載量を環境のために犠牲にする必要もありません。まさに待望のシステムでしたし、昨年末に尿素水が不足し価格が高騰した際にも注目されました。
もともと「HC-SCR」は平成21年(2009年)排出ガス規制に対応するため、日野が独自開発しました。優れた技術が評価され、機械振興協会から2013年度経済産業大臣賞を授与されています。しかしその後、環境規制はさらに厳しくなり、現行の平成28年(2016年)排出ガス規制に対応することが迫られます。中型エンジン「A05C」+「HC-SCR」の不正は、この規制への対応途上で起きました。
リコール作業は部品交換。つまり、試験の不正と同じこと?
「A05C」と「HC-SCR」を組み合わせたパワートレインが法律の規制値を満たさないことが判明し、日野は4万3000台を自主回収。無償修理を実施します。「今月中にはお客様へご案内できるよう、原因究明およびリコール等の対策検討を急いでおります。リコール内容の詳細については検討中です」と、日野は話します。
ユーザーである輸送事業者は、どう感じているのか。自らも運転し、首都圏に本社を置く経営者はこう話します。
「発表を聞いて、ディーゼルエンジンの環境規制はもう限界。にっちもさっちも行かないのではないかという危機感を持ってます」
事業者は日常業務で車体の点検を行うほか、整備も実施する場合があります。トラック・バスメーカーの技術や国土交通省の規制に精通する事業者がユーザー目線でこのリコール対応について説明します。
「中型エンジンの不正は法律違反の車両を走行させていることになるから、すぐにでも対応してもらうしかない。それはどういうことかというと、開発時間はかけられない。長期の耐久性に欠ける部品であっても、新品に交換することで次の車検、またその次の車検まで延ばすしかない。それでも実際に規制値を上回ることがあるかどうか。車検で調べるというのが現実的な対応でしょう。つまり、やれることは不正と同じでしかないと、我々は受け止めています」
不正を起こしたメーカーへのあからさまな擁護記事は喘息公害を産んだ環境汚染への記憶が薄らいだせいもあるのでしょうか。喘息発作に苦しむ一被害者として環境保護や順法意識に欠けた記事に憤りを感じます。