最初は妥協の産物だった? F-14「トムキャット」の30年『トップガン』の最強戦闘機 退役の裏側

予算不足で後送りされたアップデート化

 最初のF-14A型が搭載していたプラット&ホイットニー社製のTF30ターボファンエンジンは本来、F-14よりも前に開発されて中止になったF-111B戦闘機のエンジンであり、流用された「トムキャット」にとっては明らかに推力不足でした。また、機体とのフィッティングの問題から、飛行中のコンプレッサーストールやフレームアウトといった、戦闘機としては致命的な問題も抱えていました。

 アメリカ海軍もエンジンが弱点であることは認識しており、TF30エンジンを搭載したA型は少数の生産にとどめ、エンジンを改良したB型とアビオニクスも含めた全面的なアップデートをしたC型を早い段階で計画していました。つまり、A型は海軍にとって妥協の産物だったといえるでしょう。しかし、B型とC型の計画は予算問題により中止になったことで、問題を引きずったままA型の生産が続けられたのです。

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アメリカ国立航空宇宙博物館別館に展示されているF-14「トムキャット」159610号機のエンジンノズル部分のアップ。F110ターボファンエンジンに換装したことでノズルの形状も異なり、A型とB・D型を見分ける基準のひとつとなっている(布留川 司撮影)。

 ようやくF-14「トムキャット」が新しいエンジンを手に入れることができたのは1987(昭和62)年のこと。新エンジンは、ゼネラル・エレクトリック(GE)製のF110ターボファンエンジンでした。このエンジンは空軍のF-16「ファイティング・ファルコン」やF-15E「ストライクイーグル」も派生型を搭載しており、ある意味で名エンジンといえるものでした。

 この新型エンジンを搭載した機体はF-14A+型と呼ばれます(1991年にF-14Bに名称変更)。その後、エンジンだけでなくレーダーなどのアビオニクス類も大幅に改良したF-14D型の開発も進められ、こちらは1990(平成2)年から配備が始まりました。

 D型の登場で、アメリカ海軍はようやく本来望む性能を持ったF-14「トムキャット」を手に入れたといわれています。同機の初飛行は1970(昭和45)年12月21日、運用開始は1974(昭和49)年9月22日のため、初飛行から20年、運用開始から16年を経てようやく満足できる「トムキャット」が登場したといえるでしょう。

【写真】最後まで飛んでた F-14「トムキャット」159610号機のディテールアップ

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