最初は妥協の産物だった? F-14「トムキャット」の30年『トップガン』の最強戦闘機 退役の裏側

2006年の退役後も根強い人気を誇るアメリカ製の可変翼戦闘機F-14「トムキャット」。初代『トップガン』でも空戦の主役として描かれた同機も、実は欠陥エンジンや冷戦終結などにより常に翻弄された波乱万丈の歴史をたどっていました。

予算不足で後送りされたアップデート化

 最初のF-14A型が搭載していたプラット&ホイットニー社製のTF30ターボファンエンジンは本来、F-14よりも前に開発されて中止になったF-111B戦闘機のエンジンであり、流用された「トムキャット」にとっては明らかに推力不足でした。また、機体とのフィッティングの問題から、飛行中のコンプレッサーストールやフレームアウトといった、戦闘機としては致命的な問題も抱えていました。

 アメリカ海軍もエンジンが弱点であることは認識しており、TF30エンジンを搭載したA型は少数の生産にとどめ、エンジンを改良したB型とアビオニクスも含めた全面的なアップデートをしたC型を早い段階で計画していました。つまり、A型は海軍にとって妥協の産物だったといえるでしょう。しかし、B型とC型の計画は予算問題により中止になったことで、問題を引きずったままA型の生産が続けられたのです。

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アメリカ国立航空宇宙博物館別館に展示されているF-14「トムキャット」159610号機のエンジンノズル部分のアップ。F110ターボファンエンジンに換装したことでノズルの形状も異なり、A型とB・D型を見分ける基準のひとつとなっている(布留川 司撮影)。

 ようやくF-14「トムキャット」が新しいエンジンを手に入れることができたのは1987(昭和62)年のこと。新エンジンは、ゼネラル・エレクトリック(GE)製のF110ターボファンエンジンでした。このエンジンは空軍のF-16「ファイティング・ファルコン」やF-15E「ストライクイーグル」も派生型を搭載しており、ある意味で名エンジンといえるものでした。

 この新型エンジンを搭載した機体はF-14A+型と呼ばれます(1991年にF-14Bに名称変更)。その後、エンジンだけでなくレーダーなどのアビオニクス類も大幅に改良したF-14D型の開発も進められ、こちらは1990(平成2)年から配備が始まりました。

 D型の登場で、アメリカ海軍はようやく本来望む性能を持ったF-14「トムキャット」を手に入れたといわれています。同機の初飛行は1970(昭和45)年12月21日、運用開始は1974(昭和49)年9月22日のため、初飛行から20年、運用開始から16年を経てようやく満足できる「トムキャット」が登場したといえるでしょう。

【写真】最後まで飛んでた F-14「トムキャット」159610号機のディテールアップ

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