「変動運賃」高速バスはどう磨かれてきたか 新導入も続々 鉄道で検討しているのは“別物”
導入まで8年 ユーザーの慣習を変える必要があった
高速バスのダイナミック・プライシングは、2012(平成24)年の制度改正で認められました。同年11月27日付けの『日本経済新聞』でも、さっそく「京王電鉄バスは約1億円を投じ、12年度中に基幹システムを刷新」すると報じられました。
しかし、即座にダイナミック・プライシングが実現したわけではありません。京王電鉄バスが運営し、名鉄バスや西日本鉄道ら40社以上が導入する基幹システム「SRS」でまず行われた改修は、曜日や時間帯によって運賃額を変えること――つまり、冒頭で説明した「繁閑別運賃」の実現でしかありませんでした。
その後、何度もの改修を重ね、2020年12月には、ベンチャー企業であるハルモニア社との提携により、データ分析に基づき最適な運賃額を計算、推奨する機能を実装。これでようやく本格的なダイナミック・プライシングが始まり、名鉄や西鉄らにも導入が広がったのです。
その間、課題はたくさんありました。SRSの取扱い路線は、30分間隔など高頻度運行の昼行路線が中心で「用件が早く終わったから1本前で帰宅」というような「便変更」が定着しています。運賃額が変動すれば、便変更の際に差額が発生します。そこで、スマホの簡単な操作で差額調整できるよう改修されました。リピーターの習慣を、長年の間に定着した「事前予約→当日車内支払い」中心から、「予約時にウェブ上でクレジット決済」中心へ誘導する時間も必要でした。車内支払いだと、乗客ごとに異なる運賃に乗務員が対応しきれないためです。
一方、ジェイアールバス関東/西日本ジェイアールバスが運行する首都圏~京阪神線では、京王に先立つ2017年に早期購入割引「早売」が廃止され、変動運賃「得割」が導入されました。同路線は夜行便が中心で便変更が少ないことから、早くにダイナミック・プライシングが導入された形ですが、この「早期購入割引の廃止」にも、実は従来の慣習を打ち破る大きな意味があります。
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