レイテ沖海戦「謎の退却」がなければ日本は勝てた? 何が待っていた? 太平洋戦争最大の“もしも”

アメリカ輸送船団はいずこへ?

 日本艦隊の規模は史実の西村艦隊と比べ約10倍で、攻撃は分散しますし、アメリカ艦艇が突破した日本艦船追撃で反転すれば、レーダーを使ってもどれが味方艦かわかりません。乱戦で両軍艦艇の衝突も起こるでしょうが、日本側の勝利条件は「レイテ湾突入」のため、問題ありません。

 また、日本側は高速で北上するため、アメリカ側の迎撃可能時間は最少です。「大和」「武蔵」を始めとした戦艦9隻は、短時間で無力化は困難です。しかも、魚雷発射後の日本艦は、可燃物が減ったことで、沈みにくくなっているはずです。

 結果として至近距離での砲撃戦が多発し、アメリカ側も甚大な被害を出すでしょう。迎撃可能時間の短さから考えて、日本艦艇突破阻止は不可能だと筆者は推察します。

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1944年10月25日、日本の特攻攻撃を受け艦尾から煙を出すアメリカ空母「スワニー」(画像:アメリカ海軍)。

 とはいえ、日本艦隊の一部艦船がレイテ湾突入に成功したとしても、アメリカ輸送船団は退避したあとで、それら本命の撃破は難しかったといえます。加えて翌朝のアメリカ軍機による空襲は防げません。そのため、その後はレイテ湾から出ることができず、そこで多くの艦船が沈没ないし戦闘不能になっていくと思われます。

 以上、後知恵で日本軍に最も都合がいい「if」を想定しましたが、それでも敵輸送船団撃破という目標は達成できませんでした。栗田艦隊の「謎の反転」が批判されるレイテ沖海戦ですが、残念なことに「作戦成功の可能性」は最初から、ほぼなかったということです。太平洋戦争末期の日本軍が、いかに不利な状況だったのかを、痛感させられる戦いと言えるでしょう。

【了】

【日米両艦船の激闘】レイテ沖海戦における戦艦や空母の敢闘ぶりを見る

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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コメント

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2件のコメント

  1. 栗田長官の幕僚(部下)にチキン野郎がいたから謎の電文で反転しただけです。栗田さんは、ミッドウェー海戦でも逃げています。

  2. 台湾沖航空戦の誤認戦果がある限り掃討のための第三艦隊前衛の志摩艦隊は派遣されるので合流不能かもとも思える
    また栗田艦隊の航路選定は早期の企図暴露を避けるためだし西村艦隊との分散は連合艦隊参謀長の1006発信で分進の方が有利と図演で出たと言われてるので第二艦隊司令部でこの意向を覆すのは難しそう
    ただこのifはやっぱり興味深いよね