知られざる「日本海軍のオーストラリア本土攻撃」奇襲機の残骸が物語る捕虜のリアル

いまから80年前の1942年2月19日、旧海軍空母部隊によるオーストラリア・ダーウィン空襲が実施されました。その歴史を今に伝えるため、空襲に参加した零戦の残骸が博物館に展示されています。

パイロットは生きたまま脱出、でも捕虜に

 なお、攻撃は完全な奇襲となったため、作戦に参加した日本軍機で撃墜されたのはたったの4機でした。その中の1機が、ダーウィン航空博物館に展示されている零式艦上戦闘機二一型(尾翼番号BII-124)です。

 同機は、飛行場攻撃の直前に被弾。このときエンジンのオイルタンクが破損したことでエンジン不調を起こし、ダーウィンの北にあるメルヴィル島の密林に不時着しました。この時のパイロットであった豊島 一氏(当時の階級は三等飛行兵曹)は、不時着した機体から脱出して島内へと逃亡しますが、24日に地元民に拘束され、オーストラリア軍へと引き渡されて捕虜になります。豊島氏は第2次世界大戦中、オーストラリア軍が確保した最初の日本人捕虜でした。

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ダーウィン航空博物館に展示されている零式艦上戦闘機二一型の残骸(布留川 司撮影)。

 一方、不時着した零戦二一型の方は、不時着時に再飛行ができないほどのダメージを負いましたが、それでも当初は機体全体が原型を止めていたそうです。しかし、オーストラリア軍は機体全体を保全することはせず、その一部のみを回収。結果、現在展示されている残骸は、そのまま1960年代初頭まで不時着現場で放置されていたそうです。ただ、逆に手つかずのままだったことから破壊されることなく、ダーウィンで展示されるようになったといえるでしょう。

 ダーウィン航空博物館に展示されている同機は、機体の損傷が激しく、展示状態を一言で表せば「残骸」といった感じです。主翼から後ろの胴体は欠損しており、機首部分のエンジンも外れてその脇に置かれています。機体全体の塗装は風化して剥げて赤茶色になっており、コックピット部分は操縦席や風防が無くなり原型を止めておらず、機体表面も所々に穴が開いて内部の構造が見えていました。

 そこから類推するに、この機体は我々日本人が零戦に抱くような「優雅」や「格好良さ」のイメージなどなく、過去の空襲という出来事を伝えるための「生き証人」的存在だといえるでしょう。

 ちなみに、ダーウィン航空博物館から車で20分ほど行ったところにある「ダーウィン軍事博物館」の方が空襲に関する展示資料は充実しており、こちらではパネルやアニメーションなどで当時の様子を詳しく知ることができます。

【了】

※一部修正しました(2月19日19時13分)。

【戦争の生き証人】豪州に不時着した零戦「BII-124号機」の詳細なディテールほか

Writer:

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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コメント

1件のコメント

  1. 写真の零戦は二号機銃を積んでますね。21型にも搭載されたことがわかるよい写真です。

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