一般公開された「無人戦闘機」空戦をどう変える? MQ-28 半世紀ぶりの豪州オリジナル機の実力は

多用途性に優れているのも大きなポイント

 MQ-28「ゴーストバット」は、AIによって制御され自律的な飛行と作戦遂行も可能ですが、前述したように単独任務だけでなく既存の有人軍用機と連携して行動できるのが一番の特徴です。

 これまでは航空戦で投入戦力を増やすには、より多くの有人戦闘機を出撃させる必要がありました。しかし、どの国の空軍でもパイロットや機体の数に限りがあり、また先進諸国では人件費の高騰や少子高齢化の進展などといった諸問題も抱えています。そういった懸念点を無人機で払拭しようという考えからMQ-28は生まれたといえるでしょう。

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2人乗りのF/A-18F「スーパーホーネット」戦闘機と編隊を組むMQ-28「ゴーストバット」のイメージイラスト(画像:ボーイング)。

 また、攻撃や偵察といった任務中の危険な部分を有人機の代わりにMQ-28が担当することで、敵の反撃によって撃破・損耗しても、人的被害を軽減し、「戦闘」にかかるコストを低くする効果もあります。

 そのため、MQ-28はさまざまな任務に対応できるよう、機体先端のノーズ部分がモジュラー式ペイロードとして設計されています。ノーズ部分は任務に応じた複数の種類が用意され、それぞれにセンサーや用途に応じた搭載物が組み込まれ、これらを交換することでMQ-28は戦闘、偵察、電子戦など様々な任務で使えるそうです。

 ゆえに、ボーイング・オーストラリアの説明によると、MQ-28は新戦力というよりも、既存の軍用機(コンセプト画像や動画などでは戦闘機だけでなく、E-7A早期警戒管制機と連携する姿も描かれている)の能力を「拡張」するための無人機だといいます。

 MQ-28の開発完了と配備開始のスケジュールはまだ公式に発表されておらず、現時点では「AI制御による有人機との連携」というコンセプト自体も未知数の部分が多いともいえます。

 少し前までの無人機や人工知能について語る場合、戦場の完全無人化といったイメージが強かったのに対し、このMQ-28はそこまで飛躍したものではなく、あくまでも「有人機との連携」というものです。筆者(布留川 司:ルポライター・カメラマン)としては、この発想の方が、無人機としてはより現実的で具体的なものなのだろうと感じました。

【了】

【飛行シーンや後ろ姿も】豪州生まれの多用途無人機MQ-28をいろんなアングルから(写真で見る)

Writer: 布留川 司(ルポライター・カメラマン)

雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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コメント

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2件のコメント

  1. 陸海空どこも有人と無人の連携ということをやろうとしてるがメリットが理解できない。有人がいないとダメなレベルだと有人やられた無人は全部ムダになるし、無人が自律して出来るなら有人はただのお荷物。連携させる為の技術開発するぐらいだったら無人一本に集中した方がいい。
    深く考えずになんとなーく言ってるコンセプトな気がする

  2. ずっと離れたAWACSから管制するとかなら分かるよ。でもコンセプトスケッチは編隊飛行してるのばっか。無人同士は制御工学でまさに阿吽の呼吸で動けるのに、そこに人間いれてどうすんの??