ディーゼル機関車?弱すぎる 世界最強「ガスタービン機関車」が短命だった理由 パワーはバケモノ級

標高1800mの高地でもハイパワー発揮できる“バケモノ”

 この機関車の場合は、標高およそ1800m(約6000フィート)気温32度における定格が8500馬力でした。その出力に合わせた発電機の定格は6300キロワットでした。この条件よりも気温や標高が低い場合にはエンジン出力は増えます。海面高度では1万馬力を超える出力が出せるエンジンでしたが、12軸の動輪では8500馬力が適していたようです。UPでは実際に発電機の設定を変更して7500キロワットに増強するテストも行いましたが、その程度の出力では燃料車も動力化しないと十分なメリットがないと判断され、実行されていません。

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ガスタービン機関車26号の「Cユニット」。すなわち燃料車部分の台車(細谷泰正撮影)。

 このように、UPの第3世代ガスタービン機関車は、いうなれば世界最強の機関車と言えるほどの存在でしたが、1960年代に入ると徐々に旗色が悪くなっていきます。というのも、前述したように燃料消費が多かったため、重油と軽油の価格差が縮小すると経済的なメリットがなくなっていったからです。

 結局、大量に整備されたUPのガスタービン機関車も急速に数を減らし、最後まで残った車両も1969年の運転を最後に引退しました。2023年4月現在は、2両がユタ州とイリノイ州で1両ずつ展示保存されています。

 ガスタービン機関車は、まさしく燃料代が激安だったアメリカだからこそ生まれた鉄道車両といえるでしょう。たとえるなら、重油と軽油の価格差が縮まったことで姿消した、“アメ車” の鉄道版といえるのかもしれません

【了】

【日本も造ってた!】国鉄が製造したガスタービン試験車「キハ391系気動車」ほか

Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)

航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事

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