悪路を行くなら“浮かせてしまえ”!? 実際あった「空飛ぶジープ」とは 最近またトレンドに?

陸軍の要請を受け3社が試作

「ジープ」はアメリカが第2次世界大戦で大量に使用した小型四輪駆動車で、軽便で走破性が高く連合軍を勝利に導いた立役者のひとつと評価されていますが、このジープの走破性を限界まで上げ、それならばタイヤで地面を走るのではなく浮かせてしまえばよいという野心的なアイデアでした。軽快に戦場を飛び回る空中騎兵を思い描いたようです。

 陸軍の要請を受けて1957(昭和32)年、自動車メーカーであるクライスラーがVZ-6、航空機メーカーであるカーチスがVZ-7、ヘリコプター中心の航空機メーカーであるバイアセッキがVZ-8「エアジープ」と、計3種類のフライングジープを試作します。

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連合軍を勝利に導いたとまでいわれる小型四輪駆動車「ジープ」(写真はウイリスMA)。大量生産され、連合軍が活動するあらゆる戦線で見られた。(画像:アメリカ陸軍)。

 クライスラーのVZ-6は、500馬力エンジンで駆動する2基のダクテッドファンを前後に配置し、ホバークラフトのようなゴム製スカートが下部に付けられました。2機のVZ-6が納入され、1959(昭和34)年初頭に試験飛行が実施されましたが、重量1088kgでは重すぎる上にエンジンのパワーが不足し、横方向の安定性に問題があったため、試験は非常に悪い結果となりました。

 カーチス・ライトのVZ-7は、4基のダクテッドファンローターが正方形のパターンで取り付けられ、乗員をタンデム(2人乗り)に配置。ローターはむき出しで、推進方向制御は各ローターの回転数を変えることで行いました。試験飛行ではホバリング能力と比較的安定した前進飛行が可能でしたが、陸軍の要求する高度や速度を満たすことはできませんでした。

 パイアセッキのVZ-8「エアジープ」は2基の3枚羽根ダクトローターを装備し、2基の180馬力ライカム・ピストンエンジンを、ひとつの中央ギアボックスで連結。片方のエンジンが故障しても空中に留まれるようにしました。操縦系統はヘリコプターに似ており、ローターダクトの下に取り付けられたヒンジ式のベーンによって方向安定性を確保。3候補の中では最も優れていましたが、採用されませんでした。

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