通勤電車の「片開きドア」なぜ減った? 大手私鉄じゃ絶滅寸前 両開きが席巻したワケ

なぜ京急は片開きドアを採用し続けたのか

 京急がほかの鉄道会社に比べ混雑率が低く、片開きでも十分だったなどということは当然なく、ラッシュ時に12両編成の電車を走らせるほど利用客の多い路線でした。

 しかし京急では、実際に国鉄の両開きドアの車両と京急の片開きドアの車両を比較し、「乗降時間はドアの幅ではなくドアの数で決まる」との結論を出し、片開き4ドアの800形を1986(昭和61)年まで製造していました。

 そんな京急も1982(昭和57)年製造の2000形からは両開きドアを採用しますが、京急800形は片開きとはいえドアの幅は1200mmあり、片側4ドアということも相まってラッシュ輸送には十分対応していたのも事実です。

両開きと片開きのハイブリッドも

 地方に目を向けると片開きの通勤形電車も存在します。

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JR北海道の車両は冬季の保温対策の点からも、現在も片開きドアが採用される(児山 計撮影)。

 その代表例がJR北海道の731系・733系といったグループです。札幌都市圏の混雑に対応するため片側に3か所のドアを設けた一方、酷寒の地ではドア幅を広げ過ぎると冷気が車内に入り込み保温能力が落ちてしまうことから、幅1100mmの片開きとなっています。

 JR四国の6000系や7000系は両開きと片開きのハイブリッドです。ワンマン運転の場合、運転台側の戸袋を省略した片開きドアにし、乗務員室とドアとをできるだけ近接させたほうが、運賃やきっぷのやり取りがスムーズになります。

 一方、ターミナルの有人駅などで多くの乗客をすばやく降ろしたい時は両開きドアが望ましく、結果 運転台に隣接するドアが片開き、中間のドアが両開きというハイブリッドタイプが生まれたのです。

 このように、鉄道車両のドアは用途や運用地域によってタイプや数が決定されます。最近は車両の標準化が進んではいるものの、それでもなお、ドアの枚数や形などは地域や用途によって差が生まれています。

【了】

【え…】首都圏ではレアな片開きドアです

Writer: 児山 計(鉄道ライター)

出版社勤務を経てフリーのライター、編集者に。教育・ゲーム・趣味などの執筆を経て、現在は鉄道・模型・玩具系の記事を中心に執筆。鉄道は車両のメカニズムと座席が興味の中心。座席に座る前に巻尺を当てて寸法をとるのが習慣。言うなれば「メカ&座席鉄」。

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