反転攻勢のウクライナ 「戦車の種類多すぎ問題」現場はどうしてる? 各国の戦車の“使いわけ”

「元軍人」アドバイザーが最前線にいるかも

 欧米メディアが2023年6月10日に報じたところでは、たとえば同陸軍第1戦車旅団と第4戦車旅団、それに新設された第33機械化旅団にはドイツ製の「レオパルト2」戦車が配備されている一方、イギリス製の「チャレンジャー2」戦車は第82空挺強襲旅団、そしてアメリカ製のM2「ブラッドレー」歩兵戦闘車は第47機械化突撃旅団にそれぞれ配備されている模様です。

 また、こうした整備補給の利便性に加えて、ウクライナ軍ではロシア型兵器と、アメリカを始めとしたNATO型兵器の運用条件が適合するか見定めるといったこともしているそうです。

Large 230614 ukrinetank 02

拡大画像

イギリス戦車「チャレンジャー2」の射撃訓練の様子(画像:ウクライナ軍参謀本部)。

 加えて第2次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、アフガニスタン紛争など、過去の戦乱を振り返ると、米英仏などといった主要国は、海外の同盟国や支援勢力に対し、兵器の供与だけでなく、それに関する運用や機能上のノウハウも提供してきました。その場合、退役して民間人となった「有能な元軍人」だけでなく、時にはバリバリ現役の軍人をあえて一時的に「退役」させて「民間人」化し、アドバイザーやオブザーバーの名目で「指導者」として送り込むことも行っています。

 おそらく今回も、米英独などから供与されたNATO規格の戦闘車両を運用して攻勢に出ている部隊には、アメリカを始めとした西側のアドバイザー・チームなどが随行しているのではないかと筆者はにらんでいます。

 彼(彼女)らは、ウクライナ軍が従来装備していたロシア型兵器とは異なる、NATO型兵器の効率的な運用方法などをアドバイスするという「当たり前の業務」に加えて、実戦下で得られたNATO型兵器の適応性や欠点を母国に報告。

 さらには、アメリカやNATOがさまざまな手段で得た偵察情報をリアルタイムで受け取り、それに現場で把握したロシア軍の状況なども加味した、直近にとるべき戦闘方針を提案する戦況情報をウクライナ軍に「アドバイス」するのみならず、同様の情報をNATOや自国軍へも送っていることは、大いにあり得るのではないでしょうか。

 アメリカやドイツなどは、この後も兵器の供与を明言しています。ゆえに、前述したような動きは、今後ますます強まることは間違いないといえるでしょう。

【了】

【ウクライナ国旗&識別表記も】これがウクライナ軍仕様の「レオパルト2A4」戦車です(写真)

テーマ特集「ロシア軍のウクライナ侵攻 最新情勢 戦争はどうなっているのか」へ

Writer: 白石 光(戦史研究家)

東京・御茶ノ水生まれ。陸・海・空すべての兵器や戦史を研究しており『PANZER』、『世界の艦船』、『ミリタリークラシックス』、『歴史群像』など軍事雑誌各誌の定期連載を持つほか著書多数。また各種軍事関連映画の公式プログラムへの執筆も数多く手掛ける。『第二次世界大戦映画DVDコレクション』総監修者。かつて観賞魚雑誌編集長や観賞魚専門学院校長も務め、その方面の著書も多数。

最新記事

コメント

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleのプライバシーポリシー利用規約が適用されます。

1件のコメント

  1. あり得る事だとは思いますが個人の想像に過ぎないのが…