「電気代が足りない!」天下の国立科学博物館 なぜクラファンで資金調達せざるを得なくなったか 国は何を?

曲がり角に来ている博物館の運営方法

 しかし、科博などの博物館や研究施設に対する国の関与は減り続けており、生き残るためには競争的資金のように外部から研究活動に必要な費用を自ら獲得する必要があります。ただ、これは国内で少ないパイを奪い合うことにつながっており、選択と集中を進めようとした結果、全体的に余裕がない状況が生まれてしまいました。

「クラウドファンディングの反応を見ていると、運営のベースになるところは国が保障してくださいという意見は大体共通している。さらにプラスのことをやるためにお金を集めようという競争は良いが、今のように競争しないと死んでしまうみたいな話は、結構しんどいですよ」(篠田館長)

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東京・上野にある国立科学博物館の日本館建屋。昭和初期に建造されたもので、建物としても歴史的価値が高い(深水千翔撮影)。

 一方で篠田館長は「科博の運営資金は国が出すべきなのだから、自分たちでクラウドファンディングをやる必要がないという研究者もいる。それは筋が通った意見だと思う。ただ私たちも野垂れ死にするわけにはいかない。将来にわたって標本を継承していかなければならない。そのためには世の中の変化に対して考えていく必要がある」と指摘します。

「例えば科博はポケットモンスターとコラボした『ポケモン化石博物館』という企画を行っている。これについて『自然史の博物館がやることなのか』という声はあったものの、まずは博物館に足を運んでもらい、多くの人にこの場所が面白いと知ってもらうことが、とても大事なことだと思う」と話したうえで、「残念ながら研究者が自分の好きな研究だけしていれば良いという時代は終わり、21世紀の研究が100年後にもつながるためには、何をしたら良いのか考えなければいけない時代に来ているのは間違いない」とも述べていました。

 クラウドファンディングの報道によって科博が注目され、賛助会員も大幅に増えました。1931年に旧東京科学博物館本館として竣工し国の重要文化財に指定されている上野本館では、映画やドラマ、CM撮影、結婚式の前撮りの頻度も増えてきているといいます。目標金額を大幅に超えたことで、科博の存在意義である「標本・資料の収集・保管」ができなくなるという当面の危機は去り、一部の資金はコレクションと保存体制のさらなる充実化や国内の科学系博物館との連携に活用するといいます。

 そうした意味では大きな宣伝効果があったと言えるものの、科博が厳しい状況に置かれていることに変わりはありません。篠田館長いわく「再びクラファンを行う予定はない」とのことでしたが、科博が今後も継続して研究や展示を行っていくには、新しい運営を支えることができる新しいスキームを構築する必要があるのではないでしょうか。

【了】

【未公開の激レア!】科博から「ヒロサワシティ」に移った“零戦”今こうなってます!!(写真)

Writer: 深水千翔(海事ライター)

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

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2件のコメント

  1. 本当に必要なものなら、税金などつかわず国民の自発的な寄付だけで運用できるはずなんだけどね。
    寄付が集まらないならそれは「いらない」という民意。
    「金はださないが必要だ!!!」は幼児の駄々。

    • 日本は国際的にはお金持ちの国では?国立天文台のクラファンといい、お金を産まなそうな分野には金は出さないほど財政が厳しいんですか?近視眼的な国民性が現在の日本の下り坂の原因だと思いますがね。