ヒトラー専用列車がなぜ「アメリカ号」? 敵国名を付けた「走る大本営」の末路

列車にはどんな設備があった?

 列車の編成は、ヒトラー専用客車と会議用車、食堂車、寝台車、浴室車、幕僚随員車、ゲスト用客車、通信車、警備要員車、電源荷物車、到着地で使用する専用乗用車を運ぶ平台貨車など組み合わせて10~16両で、前後には2基の20mm対空機関砲を搭載した護衛用車両を連結しました。約200名が乗車し、2両の機関車が重連でけん引しました。

 ヒトラーの専用列車ですから、絢爛豪華かつガッチリ装甲で覆われているようなイメージがあるかもしれません。当時珍しかった冷暖房空調装置を備えていましたが、車内は意外に質素で実用的、ゲーリングの「アジア号」の方がずっと豪華だったそうです。また驚いたことに防弾装甲は施されていなかったようです。連結されていた対空機関砲も実際に火を吐くことはありませんでした。

 特徴的なのが散髪室も備えた浴室車です。ヒトラーは独裁者らしく常に見られていることを意識して身だしなみには気を使っていたとされ、浴室車は容量1万1000リットルの水タンクを備え、満水時には車重78tにもなり編成の中で最も重い車両でした。

 大本営としての機能は万全でした。外国の外交団も迎えられるような会議室や記者室があり、無線通信、各駅施設から接続できる有線電話、暗号装置も備え、移動中でも全国に司令を発することができました。

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「アメリカ号」の対空機関砲を備えた警護車。こちらは単装20mm機関砲で、警護車も何種類かあったようだ。

「アメリカ号」は1943(昭和18)年2月1日に「ブランデンブルグ号」へ改名されますが、アメリカが参戦して敵国になったのは1941(昭和16)年のことであり、改名まで長い時間が経過しています。この時間差の原因ははっきりせず、固有名詞に拘りはなかったのかもしれません。ちなみに改名後も非公式に「アメリカ号」と呼ばれることはあったようです。

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