「コロナ禍前には決して戻らない」現実化した2023年の鉄道 値上げラッシュ 急な合理化 仕方ないことなのか
急速な変化に順応しきれていないのは鉄道マンも?
そして人手不足を背景に進むのが駅の要員削減、無人化です。特に地方ではコロナ禍以前から行われてきましたが、近年は大手私鉄や都市部でも拡大しています。2023年はJR四国、えちごトキめき鉄道、しなの鉄道など地方路線に加え、JR九州は都市部でも無人駅を拡大しており、「副作用」として不正乗車(キセル)が激増したといった報道もありました。
完全な無人駅化以外でも、JR東日本やJR西日本はみどりの窓口を廃止し、対話型券売機に置き換えました。また一部時間帯の改札無人化を拡大しており、車椅子などの介助に前日連絡が必要だったり、対応に時間を要したりという問題が起きています。
さらに駅の風景も変わりつつあります。これは2023年以前から進んでいたことですが、駅ホームの時刻表掲示の取りやめ、時計やゴミ箱の撤去など、経費削減、作業負担軽減、安全対策といった名目で姿を消しています。
サービスの姿は時代と共に変わります。昔のサービスを懐かしんでも、それすらもさらに昔から見れば変化した姿なのです。コロナ禍で加速する合理化、省力化、デジタル化の対象となるサービスには、すでに役割を終えたもの、時代の変化に対応しなければならないものがあるのは事実でしょう。
しかし公共交通機関はどんな利用者にも広く開かれた存在ですから、乗客だけでなく従業員も追い付けないような急速な変化は望ましいとはいえません。コロナ禍からの立ち直りを見せただけに、コロナ禍後の課題が浮き彫りになった1年になったように思えます。
【了】
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx
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