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eVTOLは法律の「想定外」どうする?
AirXのEH216-Sは2024年3月現在、試作機や実験機、自作機などに用いられる「JX」から始まる登録記号「JX0168」が国土交通省から付与され、実証実験が続けられています。しかし、この状態で実施可能なのは機体が目視できる範囲内での試験飛行のみで、まだまだ日本における型式証明の取得までは至っていません。実用化を阻む壁となっているのが「法制面の不備」です。
ヘリコプターを含む航空機全般について定めている航空法ですが、人が乗る航空機は基本的に「パイロットが乗って操縦する」することを想定しているという法解釈が一般的で、遠隔操縦またはコンピューターによって自律飛行する無人航空機は「構造上、人が乗ることができない」ものを指しています。要するに、パイロット不要で人を乗せて飛ぶeVTOLは、法律が想定していない存在だといえるでしょう。
もちろん法律には例外規定もあり、政令で定めることが可能です。しかし、これからeVTOLが増えていく将来を考えれば、政令による例外指定よりも抜本的に法改正をした方が良いと筆者は考えます。また、現在は航空管制の部分でも「想定外」の存在ですが、これも既存の航空機と同様に航空管制のもと飛行できるよう、住み分けを可能にする必要があります。
AirXをはじめeVTOLに関係する業界団体では、無人航空機(ドローン)の存在が航空法に追加されたように、eVTOLも法制面での立ち位置を確立できるよう、働きかけを行なっていくとのこと。つくばテストフィールドはヘリポートに併設されているため、実証実験もヘリコプターの発着と調整する必要がありますが、これも航空管制面における運用法の確立に役立つとAirXでは考えている模様です。
まだまだ克服すべき課題は山積していますが、これまでになかった交通手段が社会に受け入れられていくには必要な過程といえます。AirXでは、今回披露された中国EHang製以外のeVTOL導入も今年(2024年)4月をめどに予定しているそうなので、私たちが飛行を目にする機会も徐々に増えてくることでしょう。
【了】
Writer: 咲村珠樹(ライター・カメラマン)
ゲーム誌の編集を経て独立。航空宇宙、鉄道、ミリタリーを中心としつつ、近代建築、民俗学(宮崎民俗学会員)、アニメの分野でも活動する。2019年にシリーズが終了したレッドブル・エアレースでは公式ガイドブックを担当し、競技面をはじめ機体構造の考察など、造詣の深さにおいては日本屈指。
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