「第二青函トンネル」不要? 東京‐札幌4時間半どう実現 北海道新幹線の“現実的な”高速化を考える

2階建て新幹線の階下を貨物用に

 また、現実性はより低いと前置きしたうえで、横取基地との接続線も考えられます。横取基地とは、青函トンネル内で保線車両用に分岐したトンネルで、竜飛横取基地と吉岡横取基地があり、上下線それぞれから分岐線が延びています。地上から両横取基地までの貨物列車接続線を建設できるなら、共用区間は21kmと大幅に減らせます。海底部をほぼ建設しないため、第二青函トンネル建設より工費は安いと思われます。

 さらに、一部の貨物列車を、コンテナを搭載する2階建て新幹線に置き換えてのダイヤ確保も考えられます。「MAX」でおなじみE4系新幹線並みの車両限界なら、2階を客室にし、階下と平屋部分にコンテナをレール向きで搭載できるでしょう。

 階下は長さ12m、平屋は4m程度の空間があり、幅は3.3m、室内高さは最大4.5m取れますから、階下には長さ3.6m、幅2.3m、高さ2.2mの12フィートコンテナ3個を、平屋(1扉とし片側のみ)には12フィートコンテナを1個搭載し、片側通路を確保できるはずです。

 この場合、10両編成で最大40個の12フィートコンテナを搭載できます。ただし軸重を考えると、3軸ボギー台車が必要ですが……。在来線の貨物列車はコンテナを最大130個搭載可能で、その代替はできませんが、速達性の高い貨物を2階建て新幹線に逃がせば、共用区間を走る貨物列車数を減らせるかもしれません。

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12フィートコンテナ(画像:JR貨物)。

 この新幹線は、苗穂か函館の車両基地でコンテナを搭載し、そのまま仙台か東京まで走り、車両基地でコンテナを降ろすわけです。2階建てで最高速度300km/h以上は無理でしょうが、200km/h台でも停車駅を増やし、速達列車を避ければ、ダイヤの妨げにはならないでしょうし、画期的な高速貨物輸送が可能となる利点もあります。

 なお、夜行列車として運転することも考えられます。そもそも新幹線は騒音などの観点から午前0時から6時まで、また供用区間は保守作業の観点から午前1時から3時半まで、それぞれ走行できません。そこで、例えば東京20時ごろ発→奥津軽いまべつ23時59分着→共用区間を通過→木古内に午前6時まで停車→札幌8時前着といった列車に2階建て新幹線を使えば、旅客・貨物とも効率的に運べるでしょう。

 こうした方策を積み上げれば、新幹線と貨物列車の共存はしやすくなると考える次第です。

【了】

【斬新!】JR貨物が作った「貨物新幹線」イメージ図

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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