国鉄の“やる気のなさ”が元!? 個室寝台「シングルデラックス」改良史 いまや特急「サンライズ」に残るのみ

施設の保存車で体験もできる

 そして1991(平成3)年、寝台特急「あけぼの」用としてスロネ24形550番台が登場します。この車両は寝台幅765mmのソファ転換式寝台を備えていましたが、それまでの「シングルデラックス」と異なり、寝台幅670mmの折りたたみ式の補助ベッドが備わりました。1番個室以外は内扉も設置されていましたが、例えば補助ベッドを使って連番の個室を予約すれば、最大4人利用が可能でした。最大定員22人は「シングルデラックス」としては最大です。

 シャワー室はなく、洗面台、モニター、テーブルなどの設備も「北陸」用と同じでしたが、足乗せ台となるオットマンが常備され、昼間時の居住性が向上しました。

 なお、こちらの車両は施設「ブルートレインあけぼの」(秋田県小坂町)にて動態保存され、宿泊も可能です。筆者は宿泊しましたが、一部設備が使えないものの、ほぼ現役時と同じ室内で2人利用も可能でした。現役時代の車内放送が流れるなど、非常に本物感のある施設です。

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寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」に使われる285系電車(2024年5月、安藤昌季撮影)。

 冒頭で触れた通り最後の「シングルデラックス」となっているのが、1998(平成10)年に登場した寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」のA個室寝台です。車両は新規設計の285系寝台電車。設計自由度が高く、個室はそれまでの枕木方向向きかつ平屋に対して、レール方向向きかつ2階となっています。

 個室面積も縦2.285m、横2mと広く、それまでで最大の「瀬戸」用の奥行1.99m、幅1.47mを大きく上回ります。設備は登場時、テレビ、コンセント、洗面台、サイドデスク、チェア、浴衣、寝具でしたが、テレビは後に取り外されています。

 車両にシャワー室も備わり、アメニティグッズもあるため、同一料金だった各「シングルデラックス」の中でも群を抜いてグレードの高い車両です。寝具も羽毛布団など高級品で、寝台幅850mmも「シングルデラックス」史上最大です。

 以上が「シングルデラックス」の全てですが、筆者は「サンライズ瀬戸・出雲」に後継車両が登場し、「シングルデラックス」の歴史が続いていくことを願ってやみません。

【了】

豪華になった「シングルデラックス」乗れます! 車内を見る(写真)

Writer: 安藤昌季(乗りものライター)

ゲーム雑誌でゲームデザインをした経験を活かして、鉄道会社のキャラクター企画に携わるうちに、乗りものや歴史、ミリタリーの記事も書くようになった乗りものライター。著書『日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き』など、イラスト多めで、一般人にもわかりやすい乗りもの本が持ち味。

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