ロシアの「飛行機借りパク」その後どうなった? 前代未聞の返還拒否から2年半 リース500機のゆくえ

ロシア国産機でも西側部品が必須のケースも

 しかし、すでに深刻な部品不足が生じており、機体の「共食い整備」が行われていることが明らかとなっています。皮肉なことに国際線を取りやめた結果として生じた航空路線需要の大幅な減少は、共食いのしやすさを提供しました。ロシア国内の空港を撮影した衛星写真には、空き地などに飛行可能な状態なのか不明の機体が、大量に据え置かれている様子が確認できるといいます。

 また航空機の各種マニュアルは電子化されており、通常ならば最新の安全情報などを反映し、適宜新しいものに差し替えられますが、それもロシア向けのものは2022年以来止まっているため、マニュアルに基づいた運用の徹底が困難な状況が続いている模様で、安全性の確保が危ぶまれる状況にあります。

 すでに数十機の航空機が飛行不能になっていると推測され、それに加えてロシアの航空業界は今後ますます厳しい状況に追い込まれることが予想されます。影響は大きな事故よりもまず遅延・欠航の増加という形で表れることになると考えられます。

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ウクライナ侵攻前の2021年9月、羽田空港に飛んできたアエロフロートのA350-900型機(柘植優介撮影)。

 2024年7月には、ロシア製の旅客機スホーイ「スーパージェット100」が墜落する事故が発生しました。同機の事故原因は8月現時点では不明ですが、いずれにせよエンジンはフランスと共同開発したものであり、その他主要な部品に外国の製品が採用されています。よって事故原因の究明にはヨーロッパ諸国の協力が不可欠だと言えるでしょう。しかし、現時点では、先に述べたようにロシアは外国の支援を得られない状況にあるため、事故調査は難航するおそれがあります。

 リース旅客機の接収は、航空業界のみならず国際社会全体におけるロシアの信頼を大きく損なう行為だったと言えそうです。信頼を回復するに長い時間がかかるのは間違いないでしょう。

【了】

【経済制裁の影響は?】これが、ロシア国産の大型ビジネスジェットです(写真)

Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)

1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。

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