まだ走っていたのか! 井川線最古の「オープンデッキ」客車 あれ!? 列車の“中間に”機関車?

レトロの一言では片づけられない客車

 井川線は奥大井の紅葉が楽しめる秋が繁忙期です。最大8両編成となり、団体客が入るなど乗客数が増える場合は、千頭側に短編成の制御車+機関車のユニットを増結するため、編成の中間に機関車が挟まる、まるでアメリカの貨物列車のような珍妙な編成が見られます。

 2020年、筆者(吉永陽一:写真作家)はこの珍編成を目撃し、増結の短編成側に赤とクリーム色を纏う見慣れぬデッキ付き客車、スハフ4の存在を確認しました。この客車の型式名はスハフ1形。1953(昭和28)年に帝国車輌工業社製という、井川線最古参の客車です。製造時はまだ中部電力専用鉄道の時代であり、作業員輸送に使用された後、路線が井川線へとなってから旅客列車で活躍してきました。いわば井川線の生き字引の存在に、「まだ走っていたのか」と感嘆の声を上げてしまったほどです。

 その偶然の出会いから4年後の2024年夏。井川線の千頭駅始発201列車は4両の客車が連結され、そのうちの1両に目が留まりました。まさかのスハフ4に再会です。201列車は定期列車であり、イベントでもないのにさりげなくスハフ4が編成に組み込まれていたのです。

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閑蔵駅に到着した井川行きの列車。機関車が中間に入る珍妙な編成だが後部は増結編成で、スハフ4が連結されていた(2024年8月、吉永陽一撮影)。

 オープンデッキのステップを上がって車内へ。ロングシートに衝立で仕切られた車掌室があるシンプルな構造です。天井部は梁が剥き出しで、吊り革の代わりに握り棒が2本吊られています。床はリノリウム、天井と側部は板張り。窓は一段下降仕様の木枠となり、車内全体はかなり使い込まれている感がします。レトロと一言では言い表せない年季の入った車内を見渡し、約70年前から走り続けてきた歴史が染み込んでいる空間に、ひとまず腰を落ち着かせました。

 車掌がデッキのドアを閉め、デッキに落下防止の鎖をかけてから発車です。井川線では車掌が下車駅を尋ねます。スハフ4の乗客が下車する駅に到着するとドアを開けて鎖を外すのですが、乗降がなければドアは閉めたまま、鎖もかけたままとなります。ほかの車両は側面ドアの手動開閉式で、これも車掌が開閉します。つまり、井川線は全列車が手動式ドアなのです。

【写真】これが古~い客車の内部です

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