まだ走っていたのか! 井川線最古の「オープンデッキ」客車 あれ!? 列車の“中間に”機関車?

ダム建設のための資材や人員輸送をルーツとする大井川鐵道井川線。いまどき珍しく全列車が非冷房の客車列車です。そこに混じって現役なのが、ダム建設当時からの客車スハフ4。レトロの一言ではとても片づけられない車両に乗ってみました。

スハフ4は予備車 乗れたらラッキー

 途中駅でスハフ4へ乗車するときは、車掌に乗りたい旨を申し出て鎖を外してもらいます。安全のため、下車や乗車の際は車掌が開閉するまで待ちます。側面ドアタイプと異なり、いとも簡単にデッキへ立ててしまうので、車掌もかなり神経を使うのです。走行中は決してデッキへ立たぬ様に気をつけることが、この車両に乗車する最大の注意点であり、マナーです。

 スハフ4のロングシートは、クロスシートが主流の井川線では珍しい存在です。通勤電車と同じような座り方で、旅情感は薄れるかと思いきや、向かい側の車窓が目一杯入りこみ、同席の乗客も景色に見入っていました。90パーミルのアプト式区間では、車窓がみるみると斜めになり、急坂を登る感覚が五感に伝わってきます。また、ほかの客車と比較して、レールの繋ぎ目の揺れも、少々ダイレクトに伝わってくる気がしました。

 スハフ1形は3~7号の計5両が製造され、スハフ4と6が残存しています。6は予備車として川根両国駅の車両基地に留置されていますが、スハフ4も実は予備車扱いなのです。乗車後に大井川鐵道へ取材したところ、閑散期・繁忙期関係なく、多客時に編成へ組み込むことがありますが、確実に動くとは限らないとのこと。予備車ながらオープンデッキ構造ゆえ、安全上の観点であまり運用に入りません。

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スハフ4のデッキ部分は大人がやっとすれ違えるほどの狭さである。ステップ部分は鎖がされているだけだ。千頭駅にて(2024年8月、吉永陽一撮影)。

「スハフ4は予備車という存在だから、運転していたらラッキーですよ!」

 とは、広報の山本豊福さん。スハフ4以外の客車も製造時期の違いで差異があり、車内のシートも路線バスから転用した客車もあって、どれに乗れるのかは井川線の楽しみでもあります。

 鉄道ファンにとって気になる存在はスハフ4ですが、井川線そのものが非冷房の客車列車で、いまどき思いっきり窓全開を楽しめる定期列車もそうありません。バス窓車両だけでなくスロニという荷物室合造車、半室オープン仕様のスロフ316など個性揃いです。

 これから秋も深まります。車輪が軋む音を聞き、紅葉を愛でながら個性的な客車に揺られてみるのも贅沢な旅でしょう。スハフ4が運用に入っていたら、本当にラッキーです。

【了】

【写真】これが古~い客車の内部です

Writer:

1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。日本写真家協会(JPS)正会員、日本鉄道写真作家協会(JRPS)会員。

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