ローカル線が延伸で「こんなに変わるのを見せたい」ひたちなか海浜鉄道の社長へ延伸計画の詳細を聞いた! 2029年めざす
ローカル鉄道、経営は厳しいのでは…
気になる新線の構造ですが、近隣の鹿島臨海鉄道のような単線非電化の高架橋となります。平成13年国土交通省令第151号の「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」第三十九条に「鉄道は、道路と平面交差してはならない」と規定があり、やむを得ない例外や国土交通省などが許可を得た場合を除き、新規路線は原則的に踏切を設置できません。
そのため、建設費は嵩みますが延伸区間全体で高架橋と橋梁区間が1.6km、盛土と擁壁区間が0.9kmとなり、地平区間はわずか新駅部分の0.6kmとなります。
「湊線だけでなく日本のローカル線は赤字をなんとか縮小しながら経営していますが、第一期線1.4kmの延伸によって、会社がこんなに変わるんだ、ということを見せたいです」
吉田社長はそう結びます。宅地化や企業誘致、季節によって増減する観光客の存在は、近隣の鉄道としては見逃せない増収チャンスです。最初は絵に描いた餅と思われたかもしれないローカル線の延伸計画も、計画段階から将来を見据えてしっかりと投資することで、投資以上のものが還元される。吉田社長は、この延伸が試金石になるはずだとにらんでいます。
第二期線の「新駅2」はまだ仮の場所です。自動車安全運転センターの一部移動など、大掛かりな工事が控えているため、具体化はこれからとなります。延伸はまず第一期線の開業が始まりであり、この成功がその後の延伸と全国の鉄道の盛衰にかかっています。延伸工事が始まれば、全国の鉄道会社から湊線に注目が集まることでしょう。
【了】
Writer: 吉永陽一(写真作家)
1977年、東京都生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、建築模型製作会社スタッフを経て空撮会社へ。フリーランスとして空撮のキャリアを積む。10数年前から長年の憧れであった鉄道空撮に取り組み、2011年の初個展「空鉄(そらてつ)」を皮切りに、個展や書籍などで数々の空撮鉄道写真を発表。「空鉄」で注目を集め、鉄道空撮はライフワークとしている。空撮はもとより旅や鉄道などの紀行取材も行い、陸空で活躍。
コメント