「半世紀前に生まれた戦闘機を“最新鋭”に!」 F-15ファミリー末弟の異色すぎる誕生経緯とは

2024年から部隊配備が始まったボーイングF-15戦闘機の最新型F-15EX「イーグルII」。実はF-15シリーズは1970年代に開発されました。なぜ、いまさらステルス性のない古めかしい機体の派生型を導入したのでしょうか。

F-15EX、従来機と何が違うの?

 とはいえ、そのことにはメリットもありました。具体的には、アビオニクス(航空機向け電子システム)の小型化と自動化が進んだ結果、要求されていた「マルチロール機(多用途戦闘機)」としての能力が、単座機としても複座機としても達成可能な、いうなれば両面使いできるモデルに仕上がった点などです。

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F-15「イーグル」戦闘機は航空自衛隊でも多数運用している(画像:航空自衛隊)。

 燃料や兵装なしの、クリーン状態における自重はF-15E「ストライクイーグル」より少し重くなっているものの、上昇限度である高度5万フィート(1万5240m)でマッハ2.493の最大速度を実測しています。これは、新型エンジンの搭載による推力向上と機体構造の強化による恩恵でした。F-15EXでは、重量が増えてもマッハ2.5級の性能を確保できたのです。

 ほかにも、戦闘機用としては最高性能のレーダーを装備したことで、長大な探知距離と多目標に同時対処できる機能も兼ね備えました。このレーダーの探知距離は非公表ですが、かなり長いと現場の担当者が証言しています。

 コックピットには高解像度スクリーンを2基備える一方、ヘルメット内表示の導入に伴いヘッドアップディスプレイが小型化され、これにより前方視界を改善しています。こういった部分は、第5世代戦闘機で実用化された技術がフィードバックされたからこそといえるでしょう。

 兵装面では、従来のF-15に搭載できるミサイルの数は最大8発までだったのに対し、F-15EXでは12発まで携行できるようになっています。単純計算では5割増しです。

 これが可能になった要因は「デジタルフライ・バイ・ワイヤ」の導入でした。これにより、従来のF-15では取り付けられなかった主翼の外側のパイロン(支柱)に兵器を吊り下げることで発生しやすくなる、フラッター(空力的な振動)を電子制御で抑えることが可能になったからです。

 ほかにも、F-15EXでは極超音速ミサイルをふくめ、最長22フィート(6.7m)、重量7000ポンド(約3.2t)の兵器も搭載できるようになりました。イスラエル空軍では、すでに従来型のF-15で「ブルー・スパロー」「シルバー・スパロー」といった空中発射型の弾道ミサイルを運用していますが、米空軍でも同様の使い方ができるようになります。

 つまり、B-52にしかできなかった任務の一部をF-15EXで代替することも可能になる、といえるでしょう。

 ここまで優れているからこそ、F-15EXの愛称は「イーグルII」と、あえて従来モデルと差別化を図ったものになったといえます。とうぜん、米空軍の主力第5世代戦闘機であるF-35との相互運用性は盛り込み済みで、F-35はステルス性を維持するため自機のレーダーは使用せずに、同行するF-15EXがその強力なレーダーで索敵を行いデータリンクでF-35と連携するといったことが考えられています。

 以上のような経緯で第5世代戦闘機F-35の生産と並行してアップデートされたF-15が生産されることになりました。第5世代戦闘機が計画されていた頃は誰も想像しなかったことが現実になったというわけです。

【ナニコレ!】これがNASAの超異形F-15「イーグル」です(写真)

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