「大型機×ミサイルてんこ盛り」=「空中戦の覇者」←なりません! その理由とは
ミサイルの有無によって大きく左右される空中戦の勝敗。それなら空対空ミサイルを多数装備した爆撃機があれば、空戦では無敵のように思えます。しかし、実際はそのような軍用機はどこの国も作りません。なぜでしょうか。
鈍重だと敵の攻撃を回避するのが難しい…
さらに、ミサイルの有効性を最大化するには、発射前に加速することが望ましいと言えます。ミサイルは母機の速度を引き継ぐため、戦闘機のようにマッハ1以上で飛行しながら発射すれば、ミサイルはより長射程・高速度で飛翔します。しかし、大型機は一般に高速巡航が難しく、ミサイルの発射効率も低下してしまいます。

しかも、空戦においては、攻撃するだけでなく「防御する」ことも重要です。ミサイル攻撃を回避する手段としては、電子戦装備(ECM)やフレア・チャフといった対抗手段が挙げられますが、最も有効なのは「逃げる」ことです。戦闘機であれば反転し超音速で離脱するという選択肢を採ることができますが、やはり大型機では運動性能に制限があるため、敵の攻撃を回避することはほぼ不可能に近いでしょう。
戦闘機が戦場で果たす役割のひとつは、「航空優勢(制空権)」の確保です。高速で飛べる戦闘機は極めて広い範囲をカバーすることができますが、大型機ではそうはいきません。代わりに長時間前線に留まることは可能ですが、敵の攻撃を回避することが難しいため、前線に留まること自体が大きなリスクとなるでしょう。
結局のところ、大型機に大量のミサイルを搭載しても、戦闘機の代替にはならないのです。空戦では「敵の攻撃を回避しつつ、迅速に攻撃を仕掛ける」ことが求められますが、これは戦闘機のようなある程度高機動・高速な機体でなければ実現できません。ミサイルがどれほど進化しようとも、それを運用する機体が適切でなければ意味がないのです。
過去に「ミサイルキャリア」的な航空機の構想が提案されたこともありますが、以上の理由によりいずれも実現には至っていません。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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