トランプ外交への不信感が露わに 「F-35戦闘機」離れNATO加盟国で次々と 日本は大丈夫?
世界20か国が導入を決め、配備機数も1000機を超えた最新ステルス戦闘機F-35が、ここに来て採用見直しの機運が高まっています。その理由はアメリカでトランプ政権が発足したからだとか。一体どうなるのでしょうか。
ドイツもF-35Aの導入に懐疑的
このカナダの決定の背景には、ポルトガルと同様にトランプ政権の外交政策への不信があります。F-35の運用にはアメリカの支援が不可欠であり、特にソフトウェアの管理はアメリカが一元的に行います。そのため、政治的な理由で同国が支援を停止した場合、F-35の運用が著しく困難になるリスクが存在します。

公的な発表こそないものの、ドイツ国内でもF-35に対する批判的な論調が強まっています。ドイツは「ニュークリアシェアリング(核兵器共有)」政策の一環としてF-35Aの導入を決定しましたが、核兵器運用というセンシティブな問題ゆえに、アメリカへの政治不信は実効性を揺るがしかねないとの懸念が広がっています。
F-35に対する懸念がにわかに高まった背景には、トランプ政権によるウクライナへの軍事支援の停止があります。支援停止は一時的な措置であったものの、「アメリカ大統領の一存で軍事協力の方針が急変する可能性がある」という事実が、同盟国に衝撃を与えているのです。この出来事を契機に、F-35の運用に伴う「政治リスク」が新たな問題として浮上しました。
従来、F-35は高性能とコストパフォーマンスの良さから多くの国に採用されてきました。しかし、ここにきて「トランプ政権誕生によるアメリカの政治的安定性」という要素が懸念材料になりつつあります。現時点では、F-35が世界の戦闘機市場において圧倒的なシェアを維持していますが、同盟国の不信感が拡大すれば、他の選択肢が注目を集める可能性も否定できません。
F-35が引き続き世界の主力戦闘機であり続けるのか、それとも新たな戦闘機が台頭するのか。その未来は、トランプ政権のあり方によって大きく左右されることになると考えられます。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。
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