戦艦「大和」とタッグ組んだ傑作機【後編】じつは全く違う機体が載るはずだった!? “日本初エレベーター装備の戦艦だったかも” 本当かよ?

広島県呉市に期間限定で開設されている「大和ミュージアムサテライト」に零式観測機の模型が展示されています。戸髙館長いわく、戦艦「大和」は当初、別の機体を搭載する予定だったとか。エレベーターの謎についても説明してくれました。

エレベーターが必要なくなったワケ

 十二試二座水偵の全幅は13mで、格納時の全幅は7.5mとなる予定でした。一方で零式観測機は全幅11mで、格納時の全幅は5.3mです。搭載機が零式観測機へ変更されたことは、「大和」本体の設計にも影響が出ることになります。

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「大和ミュージアム」で展示されている10分の1スケールの戦艦「大和」。同艦は、日本戦艦として初めて計画当初から航空機の搭載を考慮して設計された艦だった(深水千翔撮影)。

「十二試二座水偵を格納庫に通じるレセスに入れようとすると左右に 50cmから 60cmのクリアランスしかない。その場合、クレーンで吊るとちょっと揺れても翼がぶつかる。これではとてもダメだということで、床にエレベーターを付けてまっすぐ降ろせば左右にぶれないという設計で進んでいた。ところが零観になったら肩から後ろにトンボのように翼をたたむため、全幅がプロペラの幅ぐらいまで小さくなる。そうなると左右には数mのスペースができ、結構揺れても全然平気。だからエレベーターの必要がないと判断され、付けなくなった」

 実際に竣工した「大和」では、クレーンを用いて零式観測機を格納庫と飛行機作業甲板の間を移動させていました。

 戸髙館長は「大和の後部には本当に搭載機用のエレベーターを付ける予定で、準備もされていた。それが零観になったためにいらなくなった。しかも初期に公表された大和の図面にはちゃんとエレベーターと書いてある。それは間違えて書いたのではなくて、ちゃんとエレベーターが付くはずだった。そういう話がある。大和と零式観測機のいきさつは非常に面白いものがある」と話します。

 着弾観測を目的に開発された機体ということで地味な印象がある「零式観測機」ですが、このように「大和」の建造と深く結びついた存在であることがあります。ぜひ「大和ミュージアムサテライト」に展示された実物大の「零式観測機」を見て、試行錯誤の連続だった水上機開発と「大和」の設計に思いをはせてみてはいかがでしょうか。

【画像】これが零式観測機のコックピット内部です

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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コメント

1件のコメント

  1. いくらデカくても船体の動揺は避けられないから、クレーンでやると時間と手間がかかるし、下手すると思わぬ揺れで機体を損傷阪根ますし、エレベーターで上げ下げした方が効率的と思うけどね?