「最新の巨大空母」が東京でなぜ“イベント会場”に? イギリス海軍が断行した艦上フォーラム」の効果とは? でも決して“快適な会場”じゃなかった!

イギリス空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が東京に寄港しました。国際イベント「太平洋未来フォーラム」が初めて軍艦で開催されたわけですが、今回、イギリスが空母を国際フォーラムの会場に使った意義を考えます。

空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が東京に寄港

 イギリス空母「プリンス・オブ・ウェールズ」が、2025年8月28日から9月2日にかけて東京に寄港しました。普段は旅客船が接岸する東京国際クルーズターミナルですが、ステルス戦闘機F-35Bやヘリコプターを甲板に搭載した6万トン超の空母は異彩を放っていました。

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タグボートの支援を受けて東京国際クルーズターミナルに接岸する「プリンス・オブ・ウェールズ」(画像:英国大使館)

 外国の空母が東京湾に入るのは初めてであり、東京国際クルーズターミナルに接岸するのも初めて、そして「太平洋未来フォーラム2025」という国際イベントが空母内で開催されるのも初めてという“初めて尽くし”となりました。

 この訪問はイギリスの「オペレーション・ハイマスト」という作戦行動の一環であり、プリンス・オブ・ウェールズを旗艦とする空母打撃群が8か月にわたってインド太平洋地域に展開しイギリスの持続的プレゼンスを示すものです。

 今回注目したのは、空母が「国際フォーラムの会場」として使われた点です。

 フォーラムの公式ガイドには「Hosted in HMS PRINCE OF WALES」、つまり「空母プリンス・オブ・ウェールズがお迎えします」という演出がなされました。「太平洋未来フォーラム」はこれまで7回開催されていますが、軍艦内部での開催は初めての試みです。象徴性は抜群ですが、実務的には困難の多い挑戦でした。

 軍艦は警備や機密保持の観点から、利用には制限が付きます。国際フォーラムに不可欠な同時通訳や報道取材、各国代表団の大規模な随行団対応に十分対応できるキャパシティは備えていません。艦上レセプションや小規模会談が開催される程度です。

 しかしキャパシティという点では、空母は有利です。艦体は大きく、戦闘機やヘリコプターが収まる艦載機の格納庫もあります。プリンス・オブ・ウェールズの艦載機格納庫も広さは十分で天井も高く、大型スクリーンや舞台装置、ライティング、同時通訳ブース、観客用の椅子が並べられ、軽食ができるブレークスペースも用意された立派な国際フォーラム会場に仕上げられました。

 これらの備品は空母が装備しているわけではありません。東京湾に接岸した後、日本のイベント業者が臨時に設営したものです。格納庫は構造的にもイベント開催は考慮されていませんが、短期間で会場に変える「現場力」が発揮されたのでした。

【乗艦!】「イベント会場化」したプリンス・オブ・ウェールズを見る(写真)

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