「横田空域」って結局なに? 「旅客機は飛べない場所」説は本当? 実は「実情」は意外だった
広く航空関係者のあいだで議題になる「横田空域」とはいったいどんな空域なのでしょうか――。横田基地の「関東平野空中衝突防止会議」の内容に触れながら、その実情を見ていきます。
旅客機も実は普通に…
横田空域を飛行する航空会社の便には大きく分けて2種類あります。
その一つは、調布空港から運航されている離島便です。これらの便は毎回横田空域の中を飛行して運航されています。もう一つの例は南風運用時の羽田空港への到着便です。2020年3月から南風の日の午後3時から午後7時の間、都心上空を通過して羽田空港に着陸する新しい進入路が設定されました。この新しい飛行経路はその一部が横田空域を通過しています。つまり、羽田空港への到着便でさえ、南風運用時には横田空域を飛行する便があるのです。
今回開催された空中衝突防止会議には26団体から合計63人が参加しました。自家用機による参加も許可され今回は10機が横田基地に着陸しています。米軍基地に日本の自家用機が着陸を許可されるのは特別な配慮といえます。この裏には米空軍が横田空域では絶対に航空機同士の衝突事故を起こさないという強い決意を感じます。
大都市の上空位置する横田空域では日米双方の民間機と軍用機など様々な航空機が行き来しています。だからこそ一元的なレーダーサービスによる交通整理を行う事が重要になるのです。 しかし、せっかくレーダーサービスが提供されていてもその空域を飛行するパイロットが利用しないと意味がありません。そこでレーダーサービスを使用することのメリットをパイロットに周知するために空中衝突防止会議が始まったという背景があります。
諸外国では「ADS-B(放送型自動従属監視)」と呼ばれる機器が普及しており、ADS-Bを搭載した航空機は自機の位置情報を自動的に周囲に送信すると同時に、周囲に存在する他の航空機は空中と地上の如何に関わらず、画面上でモニタリングすることが可能になっています。
しかし、日本ではこのADS-Bが普及していないため、混雑した空域においてはレーダーによる監視と航空機の位置情報をパイロットに提供されるレーダーサービスは安全確保のために極めて重要といえます。筆者は、横田基地だけではなく、レーダーサービスを提供する全ての自衛隊基地でも同様な会議が開催されることが望ましいと考えています。
Writer: 細谷泰正(航空評論家/元AOPA JAPAN理事)
航空評論家、各国の航空行政、航空機研究が専門。日本オーナーパイロット協会(AOPA-JAPAN)元理事





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