「緊急発進しんどい…」いちいち“日本の最強戦闘機”飛ばすのか!? 解決のカギを握る「次世代機」の動向

運用開始から約40年が経過した航空自衛隊のT-4練習機について、その後継機導入に関する動きが加速しています。一方で、この後継機を単なる練習機としてだけではなく、軽戦闘機としても運用する可能性が出てきています。その理由は何なのでしょうか。

単なる練習機に非ず!? 軽戦闘機バージョンが必要なワケ

 ところで、この三菱重工のコンセプトモデルには機体側面に機関砲の発射口が設けられていました。これは、無人航空機(UAV)など脅威度の低い機体への対処を同機で実施することを想定してのものだそうですが、ここからもわかる通り、T-4後継機は純粋な「新型練習機」ではなく、ある程度の戦闘能力も備えた機体モデルもあわせて調達される可能性があります。

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「DSEI Japan 2025」の三菱重工ブースに展示された次期練習機「T-X」のコンセプト模型。コクピット横に機関砲の発射口が見える(乗りものニュース編集部撮影)。

 筆者の取材の中でも、「他国の航空機が日本周辺に接近してきた際に、これを全てF-35による緊急発進(スクランブル)で対応するのは好ましくない」と吐露する関係者も少なくありません。

 平時の緊急発進で機体の飛行時間を消費し、さらにパイロットの戦闘訓練のための時間もとられてしまうとなれば、機体の維持整備体制にしわ寄せがくるほか、パイロットの練度も低下してしまい、結果として有事のための日本の防衛力が大きく棄損されることになりかねません。今後、中国による有人・無人航空機による日本周辺での活動が一層拡大すると考えられる中では、こうした懸念の声は一層強くなるでしょう。

 そこで、T-4後継機の一部にそうした軽戦闘機のような能力を持たせることにより、教育部隊以外に配備されているT-4の一部をこれで置き換え、いわば平時の緊急発進に専従する部隊を作ることも可能性としては考えられます。そうすれば、緊急発進に時間と労力を割かれている戦闘機部隊にとっても、本来の有事に対する備えを一層強化することができるようになり、結果的に抑止力の向上が期待されます。

 実際、現状T-4後継機の候補として名前が取りざたされている機体は、いずれも武装搭載が可能なバージョンが存在している、もしくはその計画が存在しているものであり、仮に軽戦闘機仕様の機体を導入するにしても、大きな問題は生じないでしょう。

 また、肝心の練習機としての機能に関しても、おそらくT-4後継機では新たな展開が見られることになると思われます。現在、T-4では基本的な操縦技術に関する訓練は実施できるものの、同機には戦闘機に搭載されているような高度な電子機器やセンサーなどは搭載されていないため、訓練を受けるパイロットが戦闘機の操縦と運用に慣れるためには、F-15DJやF-2Bといった複座型の戦闘機で訓練を行う必要があります。

 しかし、戦闘機の搭載機器高性能化などに伴い、各国では近年これに素早く順応できるようにするための訓練を行う「LIFT機(Lead-in fighter trainer:戦闘機前段階練習機)」の導入が進められています。LIFT機には、実際に戦闘機と同様のレーダーや兵装搭載機能などを備えた機体もあるほか、機上シミュレーターにより仮想的にレーダーや兵装を搭載して本格的な戦闘訓練を行う機体も存在します。

 今後、航空自衛隊では第5世代戦闘機の代表格であるF-35の導入が進められ、かつGCAPまで戦列に加わることを加味すると、T-4後継機にはこうした次世代戦闘機の運用を想定した訓練を実施できる能力が求められることになると考えられます。

 おそらく、T-4後継機に関しては、まずは純粋な練習機としての機体導入が進められることになると思われますが、将来を見据えて、あわせて軽戦闘機バージョンの導入も計画されることになるかもしれません。

【いつか日本で見られるかも】T-4後継機の候補機種たちを写真で(画像)

Writer:

軍事ライター。現代兵器動向のほか、軍事・安全保障に関連する国内法・国際法研究も行う。修士号(国際法)を取得し、現在は博士課程に在籍中。小学生の頃は「鉄道好き」、特に「ブルートレイン好き」であったが、その後兵器の魅力にひかれて現在にいたる。著書に『ここまでできる自衛隊 国際法・憲法・自衛隊法ではこうなっている』(秀和システム)など。

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