「遅延が許されない社会」バス事業者の苦心 “雪だるま式”に拡がる影響 「働き方改革」が与えた影とは
バスは渋滞や遅延の影響を受けることがあります。近年は社会の変化や、いわゆる「2024年問題」の労働規制により、遅延の影響が従来より大きくなっています。
「新幹線で運転手を送り込む」羽目にならないために
2024年4月、バスの運行管理の要諦である国の告示「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称:改善基準告示)」が改正されました。「2024年問題」などと呼ばれ、メディアでは、1年間、1か月間の拘束時間の上限が厳格化された点が注目されました。
しかし実際には、休息期間(勤務インターバル)が「継続8時間以上」から、「継続11時間を基本とし9時間を下回らない」に拡大されたことの方が、バス業界への影響は大きかったといえます。
当然ながら、ある運転手の翌日の出勤時刻を遅らせた場合、当初予定していたシフトは誰かが乗務しなければならないため、営業所の運行管理者は、他の運転手に早めに出勤するよう電話で依頼するなど調整に追われます。
また高速バスの片道300~400km程度の路線では、従来「午後出勤で、目的地に到着後、仮眠施設で宿泊し、翌朝の便で戻ってお昼上がり」とか「早朝便で現地に向かい午後は仮眠を取った後、夜行便で戻ってくる」という「2日勤務」が主流です。東京~仙台、新潟、名古屋や、大阪~広島、松山などの路線が該当します。
改善基準告示は、運行計画ではなく実績に対して適用されます。往路が遅延した場合でも、目的地での開放時間(目的地側の車庫に入庫し勤務終了してから次の勤務開始まで)は最低でも9時間確保しないといけません。慌てて代わりの運転手を新幹線で送り込むようなケースを防ぐため、あらかじめ運行ダイヤや勤務シフトの組み換えを余儀なくされる例が相次いでいます。
特に「明け」と呼ばれる2日目は、朝または昼に仕事が終わることが多く運転手に好評のシフトだっただけに、少し残念な気もします。
なお、事業用バス(路線バス、高速バス、貸切バスなど)の運転手はいわゆる会社員ですので(法令で日雇いや派遣は禁止)、遅延した結果、拘束時間が所定労働時間や法定労働時間を上回ると、残業手当や時間外労働手当などの対象となります。
Writer: 成定竜一(高速バスマーケティング研究所代表)
1972年兵庫県生まれ。早大商卒。楽天バスサービス取締役などを経て2011年、高速バスマーケティング研究所設立。全国のバス会社にコンサルティングを実施。国土交通省「バス事業のあり方検討会」委員など歴任。著書に『高速バスのビジネス』(成山堂書店)、『「マーケティング感覚」の実装力』(同文舘出版)。新聞、テレビなどでコメント多数。





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