「廃止するとは夢にも思わなかった」 115年の歴史に幕「留萌本線」熱狂の最終日を追った 「まだ乗れる!あと10人!」
日本一短い「本線」となっていたJR留萌本線が、2026年3月31日に運行を終えました。最終日は様々なイベントが行われ、午前の和気あいあいとした雰囲気が終列車になると一変。最後の1日を追いました。
「全員乗せるぞ!」最終列車の騒然
最終列車となる石狩沼田21時11分発の9436D発車まで1時間を切った20時。石狩沼田駅前には最終列車に乗ろうと全国から集まったファンらで長蛇の列ができました。ホームでは、町主催のお別れイベントに集まった町民ら約200人が集結。深川発の最終列車9435Dの到着を待ちます。
21時すぎ、満員の9435Dが約10分遅れで到着し、降りる人々は駅外で並ぶ深川行き最終列車の列へと殺到します。その長さは直線にして約1km、450人以上はいたと思います。果たして全員乗れるのか――公式では定員オーバーで積み残しが発生した場合の救済バスは出さないと聞いていたからです。
21時15分過ぎ。いよいよ最終列車への乗車が始まります。無論、乗降口は先頭前ドア1か所です。JR・沼田町・警備会社担当者が総出でテキパキと車内へと誘導してゆきます。ホームでは見送りの町民にペンライトが配られ、地元吹奏楽者らによる「旅立ちの日に」が演奏され、運転士に花束の贈呈が行われました。
「最後のお願いです。2・3号車の方は奥まで詰めてください!」と車内では更なる誘導が行われ、「まだ乗れます!」「あと10人乗ります!」と頭上に惜別の花火が華開く中、怒号に近い掛け合いがホームで展開されました。「最後の列車に積み残しは出させない、全員乗せてゆく」という気概を感じます。
21時34分。定刻から23分遅れで、黄色いペンライトが振られる中、並んだ乗車希望全員を乗せた3両編成のさよなら列車は発車しました。
「とうとうなくなるんですね。今になって鉄道がなくなる辛さがわかりました」と、ペンライトを振る沼田町民は後悔を口にします。明日からは新たに深川へのバスの運行が始まりますが、これまで列車だと360円で行けていたところ、代替バスだとおよそ2倍の650円となります。これからは、このバスの継続という新たな課題との闘いがのしかかります。
この留萌本線廃止によって、前出のとおり2016年にJR北海道が「単独での維持が困難」として廃止方針を打ち出した「赤線区」と呼ばれていた5路線5区間、日高本線 鵜川―様似間、石勝線の夕張支線、札沼線 北海道医療大学前―新十津川間、根室本線富良野―新得間はすべて廃止されました。
今後は「黄色線区」と位置付けられている宗谷本線 稚内―名寄間、根室本線 滝川―富良野、釧路―根室間、室蘭本線 岩見沢―苫小牧間、日高本線、富良野線、石北本線、釧網本線の全線の計8路線について、線路や駅施設などの保有・維持管理を沿線自治体が担う上下分離方式存続を前提とした見直しを協議してゆくということです。
Writer: 坪内政美(スーツの鉄道カメラマン)
1974年生まれ、香川県在住。いつでもどこでもスーツで撮影に挑む異色の鉄道カメラマン・ロケコーディーネーター。各種鉄道雑誌などで執筆活動をする傍ら、予土線利用促進対策協議会のアドバイザーやテレビ・ラジオにも多数出演するなど、鉄道をワイフワークに活動している。著書に「鉄道珍百景」「もっと鉄道珍百景」「駅スタンプの世界」「100万キロを走ったセドリック」(いずれも天夢人刊)がある。





「赤線区」に駅名として挙がっている「北海道医療大学前」は「北海道医療大学」が正しい。
また、「黄色線区」のうち「室蘭本線」の区間は「岩見沢―苫小牧」ではなく「岩見沢―沼ノ端」である(起点側・終点側を正しく意識するなら「沼ノ端―岩見沢」)。