車両増やさず増発したい…“苦肉の作戦”で10%利用増! 「ジリ貧」の国鉄が始めた広島発の起死回生策

国鉄末期、地方都市圏の鉄道は長距離列車や貨物列車が優先され、不便なままでした。この状況を打破すべく導入されたのが「シティ電車」です。少ないコストで利便性を大きく向上させましたが、どのような工夫があったのでしょうか。

制約と危機感から生まれた「国電型ダイヤ」

 一方この頃、地方でも人口の都市集中が急速に進み、50~100万人クラスの都市圏が各地に出現しました。道路整備を上回る速さで自動車の普及が進み、地方都市圏では道路渋滞が問題化。鉄道の安定した輸送が見直されるようになってきました。

 このような情勢変化に対応し、国鉄でも従来立ち遅れていた地方都市圏のサービス改善・ダイヤ刷新の取り組みは、その後の国鉄民営化につながる重要なテーマでした。そこで名古屋・広島地区で具体策の検討に入ったのが、「汽車型ダイヤから国電型ダイヤへ」を合い言葉にした、時刻表を見なくても気軽に利用できる高頻度・等間隔運転の「シティ電車」でした。

 増発には車両が必要です。ちょうど客車の老朽化が進み、車両のまとまった取り換えが必要なタイミングでしたが、大量の車両を新造する余裕はありません。そこで長編成の車両を3~4両の短編成ユニットに組み換え、車両数は極力増やさずに編成数を増加する手法も活用しました。

 長編成・低頻度の列車は1時間分の乗客を詰め込みますが、20分間隔運転なら1列車あたりの乗客は3分の1になるというわけです。ラッシュ時は2編成を併結して運用する効率的な輸送体系としました。

 そのままでは制御車が不足するので、車両の新造・改造・編成組み換え・転属を全国レベルで進め、なんとか車両を捻出(ねんしゅつ)しました。ただし運転士の運用増は避けられないため、国鉄の厳しい労使関係の中、意義を説いて協力を取り付けたそうです。まさに国鉄末期の制約と危機感が生み出したサービスだったのです。

 こうして1982(昭和57)年11月のダイヤ改正で、広島地区に「ひろしまシティ電車」が登場します。それまで日中は1時間あたり2~3本の不均等な運転間隔でしたが、その後、広島駅毎時10・25・40・55分発の分かりやすいダイヤに改善しました。

 この結果、広島地区ではデータイムの利用者が10%増、終日でも6%増。短編成化で車両数を保ったまま編成を増やしたため、車両キロ(車両あたりの走行距離の合計)はほとんど増加せず、コスト増は最小限度に抑えられました。

 成功を受けて1984(昭和59)年のダイヤ改正では札幌、静岡、浜松、名古屋(東海道線・中央線)、岡山、広島(呉線)、小倉、博多に導入。1985(昭和60)年のダイヤ改正では仙台、新潟、金沢・富山、岡山、高松(気動車)に広げ、人口50~100万人の全国都市圏をほぼカバーしました。

 国鉄ネットワークが再認識されたことで、その後のダイヤ改正では通勤時間帯の増便も進み、例えば平日6~9時台に広島駅に到着する山陽本線上り普通列車は、1982年の10本から、1986年は15本まで増えています。同年には呉線、可部線もシティ電車化され、JR西日本へと引き継がれました。

 近年、JR四国が積極的に日中の「パターンダイヤ化」を進めています。利用者の減少や人手不足、収益性の低下で列車の増発が難しくなる中、シティ電車の精神は再注目されるべきなのかもしれません。

【懐かしの顔】一昔前のヘッドマーク付き「ひろしまシティ電車」を見る(写真)

Writer:

1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx

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コメント

1件のコメント

  1. 国鉄時代は貨物列車が優先で、普通列車は乗り継ぎが非常に不便だった。

    ある駅が終着の普通列車で、その駅から先の普通列車に乗り継ぎたい場合も、

    ここまで乗ってきた普通列車がホームを出て引揚線に入るまで次の普通列車はホームに入線できなかった。

    記事でこのコメでも述べているように優等列車はもちろん貨物列車も絶対に優先で停めるわけにいかなかったから、常に1本の線路は空けておかなければならなかったらだ。

    JRになって旅客会社が貨物会社に線路を貸すようになって客貨の立場が逆転し、普通列車の乗り継ぎが格段に良くなった。

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