クルマ操作「それもタッチパネルなの!?」 物理スイッチ回帰の背景に“やりすぎ”感 猛省するメーカーも
クルマのスイッチ類がタッチパネル化するなか、フォルクスワーゲンやフェラーリが物理ボタンへ回帰する方針を示しています。先進的に見えたタッチパネルですが、操作性や安全性の観点から見直しの動きが広がっているようです。
VWも「物理ボタン回帰」を宣言!?
フェラーリは先ごろ2026年2月、新型のEVモデルである「ルーチェ」の内装デザインを公開しました。この内装は、「iPhone」「iMac」なども手掛けた元アップルの最高デザイン責任者、ジョナサン・アイブ氏が担当しました。
しかしアイブ氏は、運転に関わる操作系統から“意図的に”タッチスイッチを排除したとのこと。ダッシュボードの中央にこそ大きなディスプレイが備わるものの、こちらも画面部分には物理スイッチが飛び出るように配置されており、物理スイッチの優位性にも改めて着目しているようです。
また、前述のID.4などでタッチスイッチ化を推し進めたVWも“物理スイッチ回帰”の方針へ転換する模様です。2022年からVWのCEOを務めているトーマス・シェーファー氏は2026年、英国の自動車メディアの取材に対し「ドアハンドルと(物理)ボタンは絶対に譲れない」「社内のデザイナーに蔓延していた『iPhoneのようなデザインと操作性』という精神を捨てさせた」という旨の回答をしました。
シェーファー氏は、今後発表する新モデルで物理ボタンの採用を再び推進していく方針であり、「これからは、ウインドウ用のスイッチは4個用意する」とも宣言しています。早速、2026年4月末に世界初公開となった新型「ID.ポロ」では、多くのスイッチがタッチ式からボタン式に改められた模様です。
こうしたタッチスイッチ化への反発は、今に始まったわけではありません。そもそも、タッチスイッチは操作性に優れているわけではないからです。実際に運転しながら、揺れる車内でディスプレイのタッチスイッチを操作してみれば、誰もが理解できるはずです。タッチスイッチでは、手探りで正確なスイッチの場所を探すことはできません。
正確に操作するには、スイッチがどこにあるのかをじっくりと直視する必要がありますが、当然、このように運転中のドライバーの視線を奪う行為は非常に危険です。運転中のスマートフォン操作が重大な法律違反になるのは、運転手の視線を奪うことが理由ですが、タッチスイッチはそれと同じことを求めているのです。
そうした目線で考えれば、タッチスイッチの採用拡大には「ここから先は許されない」という線引きがどこかで必要でしょう。だからこそフェラーリやVWは、見栄えの良さよりも、安全性やリアルな実用性を優先しようと決意表明したのです。
とはいえタッチスイッチ化は現在進行形の世界的なトレンドなので、今後もユーザーが実用性や安全性を軽んじて、見栄えの良い方を選び続ける限りは変わりらないでしょう。
しかし、明確な表明こそしていませんが、慎重派もしっかりと存在しています。それがトヨタです。トヨタは最新モデルである「RAV4」や「bZ4Xツーリング」などでも、しっかりと物理スイッチを残しています。世界で最も数多く売るトヨタが慎重派であり、世界2位であるフォルクスワーゲンが物理スイッチに回帰するというのであれば、世界的な主流は当然、物理スイッチへと落ち着いていくはずです。
行きすぎた操作系統のタッチスイッチ化は、この先少しずつ減っていくのではないでしょうか。10年後には「あの頃はタッチスイッチが流行ったよね」と言われるようになっているのかもしれません。
Writer: 鈴木ケンイチ(モータージャーナリスト)
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブ媒体にて新車レポートやエンジニア・インタビューなどを広く執筆。中国をはじめ、アジア各地のモーターショー取材を数多くこなしている。1966年生まれ。著書「自動車ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)





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