埼玉県の鉄道延伸「あと数マイル」計画どうなった? 実現への“それぞれの壁”と最も可能性が高い路線
埼玉県が掲げる「あと数マイル・プロジェクト」は、東京都内の鉄道4路線を県内へ延伸する構想ですが、コロナ禍もあり、計画は当初の想定通りには進んでいません。現状と課題を確認します。
最も可能性が高い路線は
最も可能性が高いのは、そのままの形で答申に記されている12号線延伸でしょう。ただしこちらも答申は「事業性に課題があり、関係地方公共団体等において、事業性の確保に必要な沿線開発」が必要としており、さらに「東京都と埼玉県に跨がる路線であるため、関係地方公共団体が協調して事業主体を含めた事業計画について検討」を要すると指摘しています。
この「跨がる問題」は全てのプロジェクトに共通する課題ですが、不可能ではありません。前例が千葉県の本八幡駅に乗り入れている都営新宿線です。同線は元々、千葉県営鉄道(本八幡~千葉ニュータウン)との直通運転を予定しており、本八幡を境界駅として都と県が分担して建設する計画でした。
当時、「東京都地方公営企業の設置等に関する条例」は鉄道の事業区域を「特別区(23区)の存する区域」としていましたが、千葉県乗り入れに際して「都及びその周辺の区域」に改正したため、12号線も制度上は都営大江戸線のまま東所沢に延長できます。埼玉県内の建設費と開業後の営業費を全額負担する条件で、都に建設・経営を委託するという選択肢もあるかもしれません。
根本かつ最大の課題は将来ビジョンです。SRの延伸開業が2040年代を目標にしていることを踏まえれば、ほかの4線区は最短スケジュールで進んでも20年程度、2040年代後半の開業になるでしょう。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、埼玉県の人口は2025年頃の737万人をピークに2050年は663万人まで減少する見込みです。さいたま市、川口市、越谷市、新座市などは2050年時点でも2020年と同等の人口を維持し、八潮市は1割近く増加しますが、草加市と所沢市は1割近く減少する見込みで、かなりの地域差が出そうです。
また、総人口が同等であっても、鉄道利用者の中心となる生産年齢人口(15~64歳)は確実に減少するため、需要確保は簡単ではありません。実現に向けて最後のステップに入った埼玉高速鉄道の延伸も、浦和美園~岩槻間の「中間駅」まちづくりがカギを握っています。「あと数マイル・プロジェクト」の実現には、まだ多くの課題が残っていると言わざるを得ません。
Writer: 枝久保達也(鉄道ライター・都市交通史研究家)
1982年、埼玉県生まれ。東京地下鉄(東京メトロ)で広報、マーケティング・リサーチ業務などを担当し、2017年に退職。鉄道ジャーナリストとして執筆活動とメディア対応を行う傍ら、都市交通史研究家として首都圏を中心とした鉄道史を研究する。著書『戦時下の地下鉄 新橋駅幻のホームと帝都高速度交通営団』(2021年 青弓社)で第47回交通図書賞歴史部門受賞。Twitter:@semakixxx





東京と埼玉をつなぐ鉄道はもう十分
埼玉県民の生活には東西縦断鉄道が必要だ
例えば、秩父ー小川町ー上尾ー春日部を結ぶとか
とにかく埼玉には横線こそが必要