「海運不況」がやってくる? 需要があるのに運べない 輸送コスト急上昇 ホルムズ封鎖で踏み出す“緊急手段”とは?

ホルムズ海峡の事実上の封鎖など中東情勢の緊迫化を受け、日本の海運大手3社が2027年3月期の業績予想で軒並み減益を見込んでいます。各社は燃料費高騰などのコスト増に直面するなか、どのような対策を講じようとしているのでしょうか。

いいお客さんだった中東向けにも運べない

 これに加え各社は滞船の発生によって運航効率が低下。対象海域を航行する際の戦争保険料の上昇がダイレクトに利益を圧迫します。中長期的に中東情勢の悪化が世界経済の下押し要因となった場合、荷動きそのものが鈍化し、全社的な市況下押しにつながる潜在的リスクも指摘されています。

「一番大きいのは、燃料油の価格上昇だ」と商船三井の田村社長は現状について話します。

「コストが増えるという直接的な影響に加えて、増えた分を価格運賃に転嫁できない部分がマイナスの影響になる。具体的には短期の契約の比率が多いコンテナ船、自動車船、ケミカル船で、この3つを合わせると240億円ぐらいのインパクトになるのではないか」

 日本郵船の曽我貴也社長も「コストの部分で、特に大きいのは燃料価格」と話します。「(業績見込みの前提のとおり)7月1日にホルムズ海峡が開き、その段階ですぐに燃料価格が正常化するかどうかというのは、全く見えない」としました。

 輸送契約を主体とする製品輸送やケミカル輸送では、中東向け出荷の減少や配船ルートの停止がダイレクトに響いています。さらに、航路の迂回や停滞による運航費の増加がそのまま損益悪化に直結しているような状況です。

リスク回避のために“陸送”

 日本郵船は自動車船事業について中東情勢の緊迫による費用の増加や、輸送台数の減少によって139億円の減益を見込んでいます。

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ホルムズ海峡から日本へ戻ってきた「出光丸」(画像:出光興産)

 同社の曽我社長は「自動車に関しては、日本やタイなどアジアから中東の方に持っていくのが圧倒的に多く、中東各国の方々から大型の車両を大変好んで買っていただいていた」と高級車の根強い人気について説明します。

「購買欲は盛んで輸送の需要はあるものの、ホルムズ海峡は入れない。そこで別なルートを開拓するため、すでに動き出している。例えばオマーンなど安全なところで荷物を降ろして、陸上のロジスティクスを通じて湾岸諸国へ運ぶルートというのもあり得る」

 一方で、中東以外の調達ルート(米国発など)へのシフトや、トレードパターンの複雑化(航海日数の長期化)が起きると、船腹需給が一時的にタイト化し、スポット運賃市況が上昇するという側面もあります。ただし、これも全体に及ぶコスト増を完全に相殺するには至っていません。

 曽我社長は「ホルムズ海峡が封鎖されることによって、日本へ原油の大半がそう簡単に入ってこなくなる。各メーカーが石油やナフサを使って生産していたものが今まで通りにはできない。そういう部分が、おそらく今後出てくる可能性はあるだろう」と危機感を示しました。

【△に注目】これが海運大手3社の「2026年度業績予測です」(画像で見る)

Writer:

1988年生まれ。大学卒業後、防衛専門紙を経て日本海事新聞社の記者として造船所や舶用メーカー、防衛関連の取材を担当。現在はフリーランスの記者として活動中。

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