自衛隊が「南極観測」から撤退へ!「しらせ」「専用ヘリ」共に退役で極地輸送は大丈夫? 新体制への課題とは

日本の南極観測を支えてきた海上自衛隊が、砕氷艦「しらせ」の退役を機に運用から撤退する方針を固めました。後継船はJAMSTEC、ヘリは極地研(NIPR)へと移管される新体制の全貌と、立ちはだかる輸送力低下の課題を解説します。

求められる「輸送部門の強化」と新造船の行方

 CH-101を運用できていたのは海上自衛隊の力があったからこそで、NIPRへの移管後、同組織が近似するサイズの大型ヘリコプターを維持していくことは困難でしょう。こうした点から後継機としてスバル製「ベル412EPX」のような中型機や、エアバス・ヘリコプターズ製AS350B3「エキュレイユ」のような小型機が選択肢として提案されています。

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「しらせ」の艦載ヘリコプターとして運用されているCH-101。南極での運用を考慮して極寒冷地対応の改造が施されている(深水千翔撮影)

 しかし、機体の小型化はそのまま空輸輸送力の低下を意味します。CH-101が約3000kgの機内搭載能力を持っていたのに対し、想定される中型機のベル412EPXでは機体の下に荷物を吊り下げる「スリング方式」による約800kgの輸送が限界です。

 NIPRの試算によると、接岸が順調な通常時であっても、中型機を用いた空輸では、従来と同量の物資を運ぶために約2倍の輸送日数が必要になると見込まれています 。輸送日数が倍増することは、限られた夏の短い期間における他の観測活動の時間を奪うことにつながり、観測計画全体に甚大な影響を及ぼしかねません。

 このため、今後はドラム缶やスチールコンテナといった重量物資をヘリコプター空輸から氷上輸送へと振り替えるなど、大幅な運航計画の見直しが求められます。加えて機内搭載からスリング方式への変更に伴い、船倉での積み付けやヘリポートでの荷役システム全体を再構築する必要があり、観測隊における「輸送部門の強化」が急務の課題として突きつけられています。

 昭和基地への物資輸送が、気象や機材トラブルなどで1年でも途切れてしまえば、越冬隊の安全確保や長年蓄積してきた観測データの継続性が崩壊してしまいます。最悪の事態を想定し、基地側における備蓄体制の強化や燃料タンクの増設といった先を見越したインフラ整備を、今から進めておく必要があるかもしれません。

 これまでは食品や消耗品、燃料の調達から荷役作業、訓練など南極観測船に関するオペレーションを海上自衛隊が一手に引き受けていましたが、新しい輸送体制では船の運航者と観測隊の間で役割分担を整理することが必須でしょう。

【注目ポイント!】これが「しらせ」の艦内です(写真で見る)

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