“空中停止できる戦闘機”という特異な性能で映画でも有名になった「ハリアーII」40年の歴史に幕!

AV-8B「ハリアーII」は、 「飛行機なのに止まれる戦闘機」として航空ファン以外にも強い印象を残しました。その同機の運用がついに終了します。

なぜ海兵隊はハリアーを必要としたのか?

 AV-8BハリアーIIは1980年代からアメリカ海兵隊で本格運用されてきた攻撃機です。最大の特徴は胴体側面4カ所に装備された可変式ノズルで、これによってジェット排気の方向を変えられることです。あの有名なホバリングも、この可変ノズルを機体下方に向けることで可能となっています。しかし、本来の目的は短距離離陸・垂直着陸(STOVL)垂直離陸・垂直着陸(V/STOL)能力によって、出撃基地を限定しない柔軟な運用を実現することにありました。

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チェリーポイント海兵航空基地で行なわれた「ハリアー・サンダウン」でのAV-8B「ハリアー II」(画像:アメリカ海兵隊)

 ハリアーIIは通常の固定翼機よりも短い距離の滑走路で離着陸することができ、強襲揚陸艦や前方作戦基地(FOB)、損傷した滑走路など、通常の航空基地以外からも運用できました。これによりハリアーIIは、地上戦力と航空戦力を密接に連携させた海兵隊独自の運用を支え、アメリカ海兵隊を象徴する航空機のひとつになりました。

 しかし2010年代に入ると、機体老朽化や整備負担の増加が課題となり、後継機への更新が本格化します。

 その役割を引き継いだのが、第5世代戦闘機であるF-35B「ライトニングII」です。F-35シリーズは空軍向けA型、海軍向けC型、海兵隊向けB型が存在しますが、最初に初期作戦能力を獲得したのは海兵隊のF-35Bであり、ハリアーIIの機種更新需要も早期実用化を後押ししたとされています。

 今回の「ハリアー・サンダウン」は、ハリアーII自体の最後の飛行を意味するものではありません。海兵隊関係者によると、一部機体は今後、博物館展示や保管施設への移送に伴って飛行する可能性があるそうです。また海外ではスペイン海軍やイタリア海軍が引き続きAV-8B系列の機体を運用しています。

 F-35Bは短距離離陸/垂直着陸(STOVL)となっており、離着陸の機能がハリアーIIとは若干違いますので、半世紀近く続いた“ジャンプジェット”の歴史は、米軍ではここでひと区切りを迎えます。しかし、滑走路に縛られず前線へ航空戦力を届けるという思想そのものは、F-35Bへと受け継がれていきます。

【画像】ついに引退…これが、最後の歓迎を受けるAV-8B「ハリアー II」です

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雑誌編集者を経て現在はフリーのライター・カメラマンとして活躍。最近のおもな活動は国内外の軍事関係で、海外軍事系イベントや国内の自衛隊を精力的に取材。雑誌への記事寄稿やDVDでドキュメンタリー映像作品を発表している。 公式:https://twitter.com/wolfwork_info

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