「たしかに危険」サッカー三笘選手が事故した現場に行ってみた 表示なき「隠れ歩車分離式信号」のワナ
サッカーの三笘薫選手が起こした自転車との衝突事故。報道では双方の信号無視が伝えられていますが、その背景には交差点特有の複雑な信号システムがありました。誰にでも起こりうる事故の遠因を探ります。
歩行者信号「青」で自転車が進むのが常態化
しかし、「自転車は車道」を強く言うようになったのは21世紀以降のことであり、長らく実質的に「自転車は歩道」という交通政策が進められてきたのが日本です。自転車の利用者に「自転車は車道用信号を守るのが原則で、横断歩道の信号に従うのは『歩行者自転車専用』との標示がある場合のみ」という意識は希薄です。
そのためこの交差点では、とくに旧中山道の上下線において、自転車の多くは車道用信号が赤、歩行者用信号が青のときでも区道を横断し進行するのが常態化しています。
また区道側でも、車道用の赤信号で止まった自転車が、歩行者用信号が青になるのを見て動き出すことがしばしばです。
三笘選手がそうした自転車につられて発進してしまったのか、それとも歩行者用信号が青になったのでついクルマを動かしてしまったのか、報道では不明です。
ただ前述のように、旧中山道の車道用信号が赤なのに交差点に進入した女性の自転車と、区道の車道用信号が赤なのに交差点に進入した三笘選手のクルマがともに「信号無視」となり、接触したということなのでしょう。
基準バラバラ“隠れ歩者分離式”に要注意
もし交差点の信号機に「一部歩車分離式信号」や「歩車分離式信号」という表示があれば、事故は起きなかった可能性も考えられます。
実はこうした表示の有無は、各都道府県レベルはもちろん、同じ都道府県でも統一されていないことがしばしばあります。たとえば東京都内でも「一部歩車分離式」「歩車分離式」と書かれた信号がある一方で、この交差点のように実際は歩車分離式であっても、その表示がないところが少なくないのです。
また、自転車に「車道の信号に従う」という働きかけも、あいまいなままです。
実はすぐ隣の交差点、国道17号中山道からこの区道に入る交差点の歩行者用信号は、2023年ごろまで「歩行者自転車専用」の表示がありました。旧中山道でも、この交差点の南で環七通りを渡る信号にも2016年ごろまで、横断歩道に並行して自転車横断帯が設置され、歩行者用信号にも「歩行者自転車専用」の表示がありました。しかしこれらの表示は何のアナウンスもなく取り外されています。
こうした経緯から、この付近を自転車で通る人は「歩行者用信号が青で自転車は通行する」と考えている可能性が高いと思われます。もし表示を取り外すのであれば、その理由、そしてその結果、自転車の通行方法はどう変わるのかを周知すべきでしょう。
さらに事故のあった交差点の旧中山道側には、2025年ごろから「自転車は車道の信号を守って進行してください」という垂れ幕が掲示されています。しかし、その周知が十分でなかったことは、今回の事故からも明らかではないでしょうか。
交通規制を担当する公安委員会や警察においては、「歩車分離式信号など、重要な情報は全国どの場所でも同じ基準で表示すること」「歩道用信号を『歩行者専用』とするのか『歩行者自転車専用』とするのかについて、わかりやすい基準を設けること」を求めたいと思います。
そしてクルマを運転する際には、こうした“隠れ歩車分離式信号”があることをしっかり理解し、また“自転車の運転者は交通ルールを知らないこと”を前提として運転することが、結果的に自衛につながることを、心に銘じておくべきでしょう。
Writer: 植村祐介(ライター&プランナー)
1966年、福岡県生まれ。自動車専門誌編集部勤務を経て独立。クルマ、PC、マリン&ウインタースポーツ、国内外の旅行など多彩な趣味を通し積み重ねた経験と人脈、知的探究心がセールスポイント。カーライフ系、ニュース&エンタメ系、インタビュー記事執筆のほか、主にIT&通信分野でのB2Bウェブサイトの企画立案、制作、原稿執筆なども手がける。





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