英国生まれの名機「ハリアー」がアメリカで“劇的進化”遂げたワケ 垂直離着陸性能を激変させた「小さな板」の正体
燃料や爆弾の搭載量を爆増させた、ある工夫により「ハリアーII」は半世紀にわたり海兵隊を支える歴史的戦闘機へと変貌しました。
最大離陸重量が3トンも増大!
主翼の拡大や遮風板の成果は驚異的でした。機体下部に形成される高圧空気のクッションによって垂直離着陸時の有効揚力は大幅に増加し、その結果「ハリアーII」は初代「ハリアー」と同じエンジンであるにも関わらず、短距離離陸時において最大離陸重量を約3000kgも増加させることに成功したのです。
3000kgという離陸重量の増加は、すなわち追加の燃料であり、爆弾であり、ミサイルの搭載を意味します。戦闘機にとって燃料は戦闘行動半径と滞空時間を、兵装搭載量は攻撃力そのものを意味します。したがって3000kgの増加は、戦闘機としての能力を根本から変えるほどの意味を持っていました。
さらに「ハリアーII」は火器管制レーダーの搭載、夜間攻撃能力の付与、精密誘導兵器運用能力の獲得などを経て、1991年の湾岸戦争からアフガニスタン戦争、イラク戦争に至るまで、アメリカ海兵隊航空戦力の中核として活躍します。
その成功はあまりにも大きく、「ハリアー」開発元であるイギリスでさえ「ハリアーII」を逆輸入することになります。イギリスが生み出した革新的な航空機がアメリカで大幅な進化を遂げ、その完成形を本国が再び採用したのです。
「ハリアー」は世界初の実用垂直離着陸戦闘機として航空史に名を残しました。しかし技術的完成度という点で見れば、その真価を引き出したのは、後継機である「ハリアーII」だったと言えるでしょう。
Writer: 関 賢太郎(航空軍事評論家)
1981年生まれ。航空軍事記者、写真家。航空専門誌などにて活躍中であると同時に世界の航空事情を取材し、自身のウェブサイト「MASDF」(http://www.masdf.com/)でその成果を発表している。著書に『JASDF F-2』など10冊以上。





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