「住むなら西武沿線」と思わせる10の理由 文化と芸術の里「武蔵野」の心地良さ

ヤギが見守るローカル線、武蔵野を凝縮した多摩川線

【9位】セミクロスシートのローカル区間

 大都会、新宿と池袋。そこから続く西武鉄道の沿線は、雑木林と街並みが続く武蔵野の風景です。武蔵野はもともと原野でした。現在の武蔵野の風景は、厳密には自然のままではなく、農地として開墾され、植林された人工的な風景といわれています。秩父も観光地として開発された地域です。

 しかし、秩父と飯能のあいだに、自然が残されたエリアがあります。通勤エリアでもない、観光エリアでもない、意外な西武鉄道の魅力。それは西武秩父線の車窓です。この路線は吾野~西武秩父間19.0kmを結んでいます。全線が電化されていますが、線路は単線です。川を渡る鉄橋は21か所。トンネルは16本。これは険しい大自然を物語る数字です。特に印象が強い場所は全長4811mの正丸トンネル。距離が長いため、トンネル内に列車のすれ違い設備があります。

 この区間の各駅停車には、セミクロスシート(一部がボックスシート)の4000系電車が使われています。短い編成、単線区間でボックスシート。大手私鉄とは思えないほどローカル線の味わいがあります。各駅停車は池袋線の飯能駅まで直通運転しています。池袋線の武蔵横手駅(埼玉県日高市)ではヤギを飼っていて、草刈り役として「みどり」が草を食べています。車窓からも見えます。飯能~西武秩父間のローカル線の旅、オススメです。

【10位】武蔵野の原風景を凝縮する多摩川線

 武蔵野と呼ばれる一帯に路線網を広げた西武鉄道で、孤立した路線がひとつだけあります。多摩川線です。JR中央線も発着する武蔵境駅を起点とし、多摩川の河原付近の是政(これまさ)駅(東京都府中市)までを結びます。8.0kmの短い路線です。しかし、その風景はまさに武蔵野のイメージです。

 多摩川線は河原で採れる建設用の砂利を運ぶために作られました。多摩鉄道によって、1917(大正6)年に開業、1922(大正11)年に全通しました。この路線を西武鉄道が買収したため、既存の西武鉄道の路線とは離れています。全通時は貨物輸送が主でしたが、砂利輸送の終了後は、多磨霊園の訪問客、多摩川競艇場の来場者などが利用しています。沿線に学校や住宅も増えており、短いながらも愛される路線になりました。

 沿線には武蔵野を愛した著名人が眠る多磨霊園や、武蔵野公園、野川公園などがあり、自然と人々か調和した武蔵野の風景があります。西武鉄道の他の路線からは離れていますが、JR中央線を乗り継いでも、出掛けてみる価値はあります。線路の真上に張られた高圧電線さえ、なにかチカラを分けてもらえそうな気がします。

 終点の是政駅から橋を渡るとJR南武線の南多摩駅です。ここは西武鉄道の路線網の南限です。そして、随筆『武蔵野』を残した国木田独歩による武蔵野の南の境界も、この多摩川でした。多摩川線がなければ「西武鉄道の路線網は武蔵野の隅々に……」とは言えません。

 随筆文学を育んだ武蔵野。西武鉄道はいま、そこにアニメ・マンガの文化を重ねます。西武鉄道の沿線には、武蔵野の自然と文化の伝統が息づいています。

【了】

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コメント

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3件のコメント

  1. ドームってなんやねん

  2. あの踏切の多さは酷いわ
    なんとかしてくれ。特に新宿線

  3. ピンクの車両は意味がわからないし好きじゃない。レッドアローも地味なので鉄道ファンが注目するようなカラーリングをお願いしたいものです。