シリア攻撃にB-1Bが飛んだ理由 トマホークはオトリ? 投入された「JASSM-ER」とは

2018年4月14日に実施された米英仏軍によるシリアへの攻撃において、B-1B「ランサー」爆撃機が出撃したのにはもちろん理由があります。米空軍にて同機とF-15E「ストライクイーグル」だけが運用できるミサイルに注目しました。

JASSM-ER投入=なぜトマホークではこと足りなかったのか

 では、今回なぜ「JASSM-ER」がシリア攻撃に投入されたのでしょうか。これについて、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は以下のふたつの理由があると考えています。

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B-1Bから投下される「JASSM-ER」。「ER」はExtended Range、すなわち射程(レンジ)の延長を意味する。写真はイメージ(画像:アメリカ空軍)。

 ひとつは、「JASSM-ER」の射程の長さです。今回のシリア攻撃に際して、アメリカ、イギリス、フランスは事前にシリアに対する攻撃の実施を強く示唆していたため、シリア政府軍はもちろん、彼らと協力関係にあるロシア軍も警戒態勢を強化していました。そのため射程の短い兵器を使用した場合にはシリア領空に接近しなければならなくなり、結果としてシリア軍やロシア軍から攻撃を受けてしまう可能性があったのです。そうした危険を減少させるには射程が長い兵器を安全な距離から発射するのが一番で、そのために「JASSM-ER」に白羽の矢が立ったのではないかと思われます。

 もうひとつは、「JASSM-ER」の持つステルス性能です。今回アメリカ、イギリス、フランスは、3か所の化学兵器関連施設を連携して攻撃しましたが、このなかでもB-1Bと「JASSM-ER」による攻撃が行われた目標はシリアの首都ダマスカス近郊にあったために、シリア政府軍の防空警戒網も非常に厳重なものだったようです。これは、シリア攻撃後に行われたアメリカ国防総省による記者会見において、マッケンジー統合参謀本部事務局長が言った「我々は首都ダマスカスという、世界で最も厳重に守られた空域において3つの建物を破壊することに成功した」という言葉にもあらわれています。そこで、この厳重な防空網を突破するために選ばれたのが「JASSM-ER」だったのではないでしょうか。

 また、今回アメリカ軍は洋上の艦艇から同じ目標に向かって、57発ものトマホーク巡航ミサイルを発射しています(今回の作戦全体で使用されたトマホークは合計66発)。筆者はこのトマホークがある種のおとりの役割を果たして、その隙に本命である「JASSM-ER」が着弾したという可能性もあるのではないかとも考えています。

「JASSM-ER」は今回のシリア攻撃が初の実戦投入となりました。アメリカ軍のなかでも現在このミサイルを運用できるのは、ここまで述べてきたB-1Bと2018年2月に運用能力を獲得したばかりのF-15Eのみですが、今後B-52H爆撃機やF-16C/D戦闘機などにも順次運用能力が与えられていく予定です。将来的に、より進化、長射程化した地対空兵器が登場してくるだろうことが予測される現代の戦場において、遠距離から正確な一撃をあたえることができる「JASSM-ER」は、欠かすことのできない存在となるでしょう。

【了】

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