米B-52が南シナ海飛行、その大きな意味とは 緊張続く海域に核搭載可能機投入の背景

B-52飛行の背景と意義

 また、さらにさかのぼった5月には、ハワイ沖で2年に一度開催され、今年がその開催年である多国間海軍共同演習「リムパック(環太平洋合同演習)」への中国海軍の招待について、アメリカ側がこれを取り消したと発表しました。

 さらに、より直接的な行動として、5月27日に中国が軍事化を進める南シナ海の西沙(パラセル)諸島において、アメリカ海軍の艦艇2隻がこの海域を航行して中国のこうした姿勢を認めないことを示す「航行の自由作戦」を遂行しました。

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B-1B「ランサー」に搭載されたスナイパーポッド。赤外線カメラで遠距離の目標や周辺をとらえ、空対地攻撃などをサポートする(画像:アメリカ空軍)。

 こうしたアメリカによる一連の行動を考えれば、今回のB-52による南シナ海飛行もアメリカによる対中国強硬姿勢の一環とみることができます。また、B-52は赤外線カメラによって遠距離の目標をとらえて周囲の状況を把握することができる「スナイパーポッド」という装置を搭載することができます。今回の南シナ海における飛行でも、もしかしたらこのスナイパーポッドを使って中国が造成した人工島の情況などを離れた場所から確認していた可能性もあります。

 加えて、今回のB-52の飛行ルートが、中国が主張するEEZ(排他的経済水域:自国に海洋資源の開発などに関する排他的な権利が与えられる水域)上空と重なっていた場合には、また違った側面も見えてきます。国際法上、EEZ上空は軍民を問わずどの国の航空機であろうと自由に飛行することができます。ところが中国は、このEEZ上空に他国の軍用機、特に情報収集機などが入ってくることを抑制する姿勢を示しています。たとえば2001(平成13)年には、南シナ海にある中国の海南島付近のEEZ上空を飛行していたアメリカ海軍のEP-3電子偵察機に中国軍戦闘機が異常接近し、空中で接触事故を起こすという大事件が発生したことがありました。

 こうしたことを踏まえ、今回のB-52の飛行ルートに南シナ海にある中国のEEZが含まれていたとすれば、国際法の考えと合致しない他国の動向に対してアメリカ軍が実施する「航行の自由作戦」を意識して、EEZ上空を堂々と飛行することでアメリカの立場を示すという、いわば「空の航行の自由作戦」ともいえる内容だったのかもしれません。

 いずれにしても、核兵器まで運用できるB-52の飛行は、中国側にとってほかの軍用機による飛行とは一線を画する、強い圧力となったのではないかと思われます。

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コメント

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1件のコメント

  1. B-52
    最終型の「H型」ですら配備から50年以上となり
    だいたい30代で機長になるので
    祖父→父→息子と3世代B-52のパイロットが
    普通に出てる!