最近のクルマはなぜ窓が小さいのか 後方視界の悪さ、車室に閉塞感…メリットはどこに

窓の下端ラインの角度でこんなに違う印象

 ある自動車メーカーの担当者は、側窓の下端が描くラインについて、「一般的にリアにかけて持ち上がると軽快さやキビキビさ、躍動感を印象付け、水平に近づくほどにエレガントさや落ち着き、大人っぽさが出てきます」と話します。

 モデルチェンジの過程で、こうしたデザイン思想が反映されていった車種もあります。たとえばマツダの「デミオ」では、初代および2代目は窓の下端が水平に近かったものが、2007(平成19)年発売の3代目からラインが大きく持ち上がり、後席の窓も小さくなりました。

「初代および2代目は、箱型を基本としたデザインで実用性を重視した『コンパクトスペースワゴン』というコンセプトでしたが、3代目はグローバルなコンパクトカーの本流である『パーソナルスマートコミューター』へシフトしました。軽量化、サイズの絞り込みとともに、『躍動と凝縮』をテーマにして本場欧州でも存在感を放つスポーティさを前面に訴求した、カタマリ感あるスタイリングが特徴です」(マツダ)

 その傾向は、形は違えど現行の4代目にも踏襲されています。「デミオ」のみならず、マツダは現在「魂動」というデザインテーマを掲げ、「クルマのデザインに生命の躍動感を吹き込むことを追求している」とのこと。そのため、ほかの車種でも窓の下端が後ろ上がりのラインを描いている傾向にあるといいます。

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マツダ「デミオ」上が2代目。下の3代目は側窓の下端ラインが後方にかけて持ち上がったデザインに(画像:マツダ)。

 前出の自動車メーカー担当者は、国産メーカー全体にそうした「エモーショナル(心を動かされる、躍動感のある)」なデザインの傾向を指摘しつつ、特にコンパクトカーでは窓の下端ラインが後ろ上がりになることが多いといいます。「コンパクトという小さなキャンバスのなかで狙いたいテーマを表現しようとすれば、多少強調されることもあるでしょう」とのこと。

 同担当者によると、後席の乗員が閉塞感を感じたり、安全運転に必要な視界が小さくなったりしないようデザイナーと設計者が調整しているといいますが、様々な要件をすり合わせた結果、相対的に窓やキャビンが小さく見えるようなスタイリングとする場合もあるといいます。一方、窓が小さく見えることについては、側面の衝突安全性を保持する観点から、下端ラインの高さ自体が上がっている傾向にあることも、理由のひとつに考えられるそうです。

 もちろん最近のクルマでも、このようなデザイン傾向に当てはまらない車種もあります。たとえばダイハツ「ミラ トコット」などは、窓の下端ラインも水平です。このクルマは主たるターゲットを「初めてクルマを運転する女性」とし、運転のしやすさ、見切りの良さなどを追求したデザインとなっています。

【了】

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コメント

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6件のコメント

  1. 視界の悪さ(特に斜め後ろ)って事故の起こしやすさに直結するのでは? 保険会社の人たちはどう思っているんでしょうか、聞いてみたい気がします。

  2. センターメーターの時の理屈と大して変わらんね。
    国内と輸出の規格をコスト面で統合したいだけでしょうに?
    私は25年前のコテコテのトヨタのセダンに乗ってますが視界や見切りも良く乗りやすい車ですよ、今回の記事に載っているトヨタへの取材記事のトヨタの回答内容は世界に追い付こうとした初代セルシオのUCF10系を設計した同じ会社の回答とは思えない内容ですよね。
    まあ、同じ会社でも各車種によるチームの考え方で傑作にもなり駄作にもなるようですがね
    初代プリウスを赤字覚悟で自社設計部品だけで世に送り出した奥田氏時代のトヨタはどうしたのでしょうか?

  3. 機能美が無い日本の工業デザインは、2、3年で陳腐化してしまいます。現行プリウスは当初から陳腐ですがね。

  4. 安全性より商売が本音でしょ。

  5. 本来優先されるべきは安全性と機能性。デザインなど二の次三の次、あとからついてくればよい。

  6. 斜め後ろから全く見えないLEDウィンカーと同じで、よくも無いデザインを優先して視認性という安全面を蔑ろにしているメーカーの姿勢がよく表れている記事ですね。