東急田園都市線は銀座線に乗り入れるはずだった 幻の直通計画が変わったワケ

都心直通ルートを変えたもうひとつの理由

 もうひとつは銀座線の輸送力です。新玉川線の都心直通ルートとなる銀座線は古くからの繁華街を結んでいて利用者が多く、1950年代から1980年代にかけての混雑率は200%を超えていました。

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新玉川線の乗り入れ先として建設された半蔵門線の電車(画像:photolibrary)。

 ここに郊外からの通勤列車を直通させれば、混雑はさらに悪化してしまいます。しかも、銀座線の車両は一般的な鉄道車両より小さく、最大で6両の編成しか組めませんでした。これでは大勢の客を運ぶことができません。そこで、営団地下鉄(現在の東京メトロ)が銀座線の混雑を緩和するための地下鉄新線を建設し、これを新玉川線とつなげることにしました。

 これなら「銀座線規格」を採用する必要がないため、「銀座線規格」よりも大勢の人を運べる「東急線規格」を採用することが可能。さらに田園都市線の地上区間と新玉川線が同じ規格になるため、地上区間から新玉川線を経由して都心の地下鉄新線に乗り入れることも可能になりました。

 この地下鉄新線が現在の半蔵門線です。新玉川線の開業から1年後の1978(昭和53)年に渋谷~青山一丁目間が開業。当初は東急の車両のみ走り、1981(昭和56)年からは営団地下鉄の車両も導入されて相互に直通するようになりました。その後は2003(平成15)年までに現在の渋谷~押上間が全て開業しています。

 現在、田園都市線の地下区間を走る列車の定員は10両(1両の長さは約20m)×1編成につき約1500人。これに対して銀座線の6両(同約16m)×1編成の定員は約600人です。仮に現在の利用者数を銀座線の電車で運ぼうとすれば、田園都市線の地下区間の混雑率は400%を超えてしまいます。規格を変更していなければ、開業後すぐにパンク状態に陥っていたかもしれません。

【了】

※一部修正しました(11月5日11時31分)

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コメント

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6件のコメント

  1. 記事中、「1978年から相互直通運転」となっていますが、当時の営団は鷺沼検車区の完成する1981年までは半蔵門線用の車両は保有していなかったので、「相互」ではなく、片乗り入れです。

    • 通りすがり様

      ご指摘ありがとうございます。 訂正いたしました。

  2. 用賀にある世田谷ビジネススクエアは、元々新玉川線を銀座線の延伸区間として建設した場合の車両基地として確保していた用地に建設されたと聞いたことがあります。

  3. 三田線はこの直通計画のために
    20m車体、狭軌で開通したが
    北側での相手方の東上線も
    計画変更になってしまいご破算に…

    結局また目黒線直通となるまで
    なんのために他社の規格に合わせたのか
    わからない状況に………

  4. 銀座線につなごうとしてみたり、都営三田線につなごうとしてみたり、結局半蔵門線につないでみたものの今の惨状。 東急電鉄はまともな鉄道会社とは思えません。

  5. 東急と銀座線の規格が違うのは分かっていた事なので、これが発表された計画だったのか、それとも机上の空論だったのか気になりますね。