走行は見納め間近か、動く旧軍「八九式中戦車」 レストア完了までの苦難とその後(写真19枚)

次々と立ちはだかる復元へのハードル

 プロジェクト最初のハードルは、野外の展示場から整備工場まで移動させることでした。通常であればレッカー車で牽引していくのですが、覆帯(いわゆるキャタピラー)が錆び付いてしまっていると簡単には動かせません。無理やりレッカーで引っ張れば破損してしまいます。そうした懸念のなか無事、覆帯は動き、レッカー移動ができました。1980(昭和55)年に動かしたことが幸いしたようでした。

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八九式中戦車に搭載されていたオリジナルの、三菱A六一二〇VD空冷直列6気筒ディーゼルエンジン(画像:月刊PANZER編集部)。

 しかし、レッカーで牽引して動いたといっても、自走させるにはハードルがたくさんあります。長年にわたり屋外展示されていたこともあり、車体各部の腐食が進んでいて、復元、補修、補強が必要でした。

 次のハードルはエンジンでした。自走させるにもエンジンがなかったのです。オリジナルである三菱A六一二〇VD空冷直列6気筒ディーゼルエンジンの復活は無理で、現代のものを搭載することで妥協、地元市民から提供された中古建設機械のエンジンを使うことになりました。搭載位置は車体中央に変更され、トランスミッションもコントロールデフ(左右の駆動輪の回転差を吸収する装置)の配置もオリジナルとは異なっています。またこのエンジンは回転方向がオリジナルと逆になるため、ギヤを新造して対応したそうです。

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レストア前の八九式中戦車、主な補修箇所が示されている(画像:月刊PANZER編集部)。
機関部のレストア前後の変更箇所(画像:月刊PANZER編集部)。
三菱A六一二〇VD空冷直列6気筒ディーゼルエンジンの説明文(画像:月刊PANZER編集部)。

 細部を復元することもハードルです。静態保存当時の姿は、必ずしもオリジナル状態に近いものではありませんでした。そこで、武器学校に保存されていた1万点以上の旧軍技術資料にあたり、戦前、八九式中戦車を生産していた三菱重工にも協力を要請して、当時の図面を取り寄せるなどしました。その結果、砲身は木製ながら作り直されるなど、よりオリジナルに近い形状を復元することができました。当時の塗色を再現することもハードルでしたが、上塗りされていたオリーブ・ドラブ色を落とした際に出てきた、原色のカーキ色を基にしたといいます。

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