戦艦はなぜ消えた? 「航空機優位」だけじゃない、空母が海上戦力の中心になった理由

空母の有用性、具体的にはどのあたり?

 まずひとつ目は「艦載機の存在」です。

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1980年1月の「キティホーク」の飛行甲板。戦闘機、攻撃機、早期警戒機、対潜ヘリなど様々な機体が並んでいる(画像:アメリカ海軍)。

 戦艦は大口径の大砲を有していますが、その射程はせいぜい40kmほどです。しかし、それが空母であれば、艦載機の存在によって、200km以上先の目標に向けて狙いを定めることも可能です。もちろんこの距離は、洋上だけでなく内陸部にも向けることができるため、敵艦艇だけでなく敵地奥の陸上目標に狙いを定めることもできます。

 しかも第2次世界大戦後、航空機はジェット化され、より速くより遠く飛べるようになりました。現代の艦載機であれば、1000km以上も先の目標に対して攻撃することも可能です。しかも、より大型の爆弾やミサイルも積めるようになっています。

 複葉から単葉へ、レシプロ(ピストン)エンジンからジェットエンジンへ、航空甲板という狭い空間でも運用可能な航空機の登場により、空母は大発展を遂げたのです。

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1986年7月、補給艦(中央)から同時に給油を受ける「ミズーリ」(手前)と「キティホーク」(画像:アメリカ海軍)。
訓練で併走する米仏の空母。原子力空母を保有するのはこの2国のみ(画像:アメリカ海軍)。
2017年7月、演習で併走する日米印の艦艇。手前が海自「いずも」(画像:アメリカ海軍)。

 ふたつ目の要素は「汎用性、柔軟性」です。航空母艦は英語で「Aircraft Career」といい、直訳すれば「飛行機運搬船」となりますが、運ぶ飛行機、いうなれば搭載する航空機の種類によって、さまざまな使い方ができるのです。

 たとえば、特定エリアの制空権(一定空域において味方の航空機が自由に行動できる状態のこと)を確保したい場合には、制空戦闘機を多めに搭載して出航し、敵国本土を叩く目的ならば攻撃機を、揚陸作戦ならばヘリコプターや「オスプレイ」のような輸送機を多めに搭載するなど、それぞれの目的に合わせて柔軟に艦載機の数や種類を変更することで、幅広く運用することができます。

 また艦載機の搭載武装も、目標が敵航空機であれば空対空ミサイル、艦船であれば魚雷や対艦爆弾、対艦ミサイルといった具合に、潜水艦なら対潜ロケットや対潜爆雷、魚雷など、陸上目標なら爆弾や空対地ミサイル、ロケット弾などといったように、積み替えることができます。

 これは海上で、砲撃戦主体の船として生み出された戦艦とは大きな違いです。戦艦は強力な艦砲を多数装備するとはいえ、それを魚雷やミサイルに積み替えることはできません。仮にミサイルを搭載したとしても、その巨大な艦砲を外すことはできず、場合によっては無用の長物を載せたままとなるのです。

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コメント

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4件のコメント

  1. 海軍の最終目的は制海権の確保です。
    高速を誇る戦艦の存在はそれだけで戦略目的を半ば達成刷ることができます。
    より高速な艦隊を敵にした側は海軍の行動に大きな足枷をはめられ、強いては戦略視野を狭められるからです。
    ドレッドノートはその単一巨砲艦としての価値が目立ちますが、その最大のド級な所はその航洋性能にあると思います。
    火力と装甲は戦術目的を達成する要素ですが、速力は戦略目的を達成する要素なのです。

    つまり空母の利点は、艦載機の速力にあるのです。
    戦艦は空母による制海権獲得を阻止できませんが、空母は戦艦の制海権獲得を阻止できる
    これが戦艦が消えた最大の理由かと思います
    戦艦が時速500kmで海上を疾走できれば、WWⅡにおいても戦艦は生き残れたのではないでしょうか?

  2. 飛行機運搬船!?違うでしょ〜⁉️ 大日本帝国海軍の空母は戦争後半、半ば運搬船と化していました。(涙)

  3. レーダーの発達も大きな要因ではないでしょうか?

  4. 4ページ目の原稿の順番がおかしいように思います。
    3つある段落を、一番下からに上に読まないと意味が繋がらない。
    「 3つ目のポイントは~」
    「 当時は、年に50%とも~」
    「 こうした理由から、~」
    の順に読むとよさそうです。